魚は食べて釣って絶滅を防げ! 経済活動と最新技術で種の保全
貴重な秩父イワナを守りたい!
埼玉県の秩父地方に、「秩父イワナ」という地域固有の魚がいます。白い斑点が特徴のニッコウイワナという魚ですが、秩父イワナはお腹側の斑点とヒレの先がオレンジ色です。また、秩父イワナは秩父地方、荒川の上流にのみ生息するところから、釣り人にも愛されています。しかし近年、地球温暖化や、台風による土砂崩れなどで、生息エリアが小さくなったこと、人為的な他地域イワナの放流による交雑(違う種類と掛け合わせること)などから、純粋な秩父イワナが少なくなってきました。そこで秩父イワナを保全しようという試みがなされています。
保全を地域経済に組み込むアイディア
自然保護・保全活動は環境を守るために非常に重要な活動で、各地域では住民によるボランティアなどがその大きな支えになっています。しかし、実際に活動すると、時に険しい山道を徒歩で見回る作業などもあり、想像以上の労力や経費がかかることもあります。そのような負担が一部の方に積み重なっていくと、やがて保護活動が持続できなくなるかもしれません。
そこで秩父イワナ保全プロジェクトでは、秩父イワナを地場産業で利用して、その利益の一部を保全活動に生かすという仕組みのアイディアを考えました。まだまだ、始まったばかりの取り組みですが、地域の方との連携を始めています。
代理親魚技術を活用して種を保全
プロジェクトのもうひとつの特徴は、「代理親魚技術」という最新技術の活用です。代理親魚技術は、増やしたい魚(このプロジェクトでは秩父イワナ)の精子と卵のもとになる生殖幹細胞を代理親になってくれる魚の仔魚期に移植し、次世代を産んでもらうというものです。この技術を使えば生殖幹細胞の凍結保存もでき、必要な時に次世代を生み出すことも可能です。また、保存時に遺伝的な多様性を科学的に解析し、反映しておくことで、今生息する秩父イワナの多様性をそのまま保全することも期待できます。こうした技術の進歩が、生物多様性を維持し、豊かな地球を将来に残すために貢献しています。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋生命科学部 海洋資源生物資源学科 助教 設樂 愛子 先生
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