ハンセン病元患者の子どものQOLと心的外傷後成長
ハンセン病元患者の子どもたちの境遇
ハンセン病とは皮膚や末梢(まっしょう)神経を病変とする感染症のことで、現在も途上国を中心に患者がいます。ベトナムにはハンセン病の元患者とその家族が暮らすハンセン病村という施設があり、子どもたちはハンセン病ではありませんが、学校や社会で偏見を持たれることがあります。その子どもたちを対象としてQOL(生活の質)を測定するツールを使って調査をした結果、施設外で暮らす子どもたちに比べて身体的健康面や精神健康面、友人関係に問題を抱えていることがわかりました。健康面では、十分な発育を促す環境にないことが影響していると推察されます。学校では偏見が原因で友人とトラブルになることがあり、それが精神的な弱さにつながっていると考えられます。
心的外傷後成長とは
ハンセン病村の子どもたちは、高校生になると「将来は医師や看護師になって、自分の父や母を助けたい」と目標を持ち、成績が上がる子もいます。これを「心的外傷後成長(Posttraumatic Growth)」といい、ショックなことがあっても、それを乗り越えようとするところに人としての成長がある、という考え方です。親がハンセン病であることや、自分への偏見や差別にストレスを感じていても、乗り越えた先に違う世界が待っていると思えることが心的外傷後成長の表れです。
他者の「ぜい弱さ、傷つきやすさ」を理解すること
社会には弱い立場にある人が一定数存在しています。また、誰もが弱さを抱えています。その弱さを「 ヴァルネラビリティー: Vulnerability(脆弱性、傷つきやすさ)」といい、ハンセン病村の子どもたちはヴァルネラビリティーを抱えながら生きています。誰もが生きやすい社会にするために、こうした人たちの気持ちや身体の状態を理解することは大切なことです。ハンセン病村の子どもたちがより社会の中で自信を持って生きられるように、子どもたちの自尊感情を高めるための研究も進められています。
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新潟県立看護大学 看護学部 人間環境科学領域 社会科学 准教授 渡辺 弘之 先生
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