数学の授業にトイレットペーパー? 中高大連携で数学嫌いをなくす
「何の役に立つの?」が、数学嫌いになる要因
突然ですが、トイレットペーパーの巻き数を計算する方法を、あなたは思いつくでしょうか? これは小学校の算数で習った公式から計算できます。
算数や数学はすべての学問の基礎となる大切な教科ですが、「この公式が将来何の役に立つの?」と思うことが数学嫌いの一因になっています。そこで、大学で、数学や教育の研究者がこのような身近な例で生徒に興味を持たせる授業を考案し、中学校や高校と連携して授業で活用する試みが始まっています。
トイレットペーパーを切って広げると
冒頭の質問の答えはこうです。ロールを横から見て、芯と外周の間にペーパーが何枚あるかが「巻き数」です。断面の一カ所を半径で切って、円周を直線に伸ばすように広げると台形ができ、上辺が芯の円周、下辺がロールの円周、高さが巻き数、面積がトイレットペーパーの長さに該当します。
長さを50メートル、芯の半径をr、ロールの半径をR、巻き数をxとし、小学校で習った台形の面積を求める公式[(上辺+下辺)×高さ÷2]に当てはめて、以下の式からxを求めればいいのです。
[(2πr²+2πR²)×x÷2=5,000cm]
論理的な考え方を身につける大切な教科
ある中学校で行われた模擬授業では、生徒がロールと芯の半径(r、R)を測り、上の式に当てはめて出したxの解を、実際に数えた巻き数と比較して一致したことを確認しました。生徒たちからは「公式でこんなこともできるとわかって感動した」「食べ物をみんなで分けるときなどに数学を使っていると気づいた」などの感想が寄せられ、数学に興味を持ったことが確認できました。
また、算数、数学で大切なもう一つの要素は、定理や公式が導き出された思考のプロセス、論理的な考え方を理解することです。問題を解くテクニックが重視されがちですが、こうした「考える力」を養うことや、過去の数学者たちの素晴らしい考え方に触れることも、算数・数学教育の重要な目的なのです。
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