講義No.12802 数学 教育

数学の授業にトイレットペーパー? 中高大連携で数学嫌いをなくす

数学の授業にトイレットペーパー? 中高大連携で数学嫌いをなくす

「何の役に立つの?」が、数学嫌いになる要因

突然ですが、トイレットペーパーの巻き数を計算する方法を、あなたは思いつくでしょうか? これは小学校の算数で習った公式から計算できます。
算数や数学はすべての学問の基礎となる大切な教科ですが、「この公式が将来何の役に立つの?」と思うことが数学嫌いの一因になっています。そこで、大学で、数学や教育の研究者がこのような身近な例で生徒に興味を持たせる授業を考案し、中学校や高校と連携して授業で活用する試みが始まっています。

トイレットペーパーを切って広げると

冒頭の質問の答えはこうです。ロールを横から見て、芯と外周の間にペーパーが何枚あるかが「巻き数」です。断面の一カ所を半径で切って、円周を直線に伸ばすように広げると台形ができ、上辺が芯の円周、下辺がロールの円周、高さが巻き数、面積がトイレットペーパーの長さに該当します。
長さを50メートル、芯の半径をr、ロールの半径をR、巻き数をxとし、小学校で習った台形の面積を求める公式[(上辺+下辺)×高さ÷2]に当てはめて、以下の式からxを求めればいいのです。
[(2πr²+2πR²)×x÷2=5,000cm]

論理的な考え方を身につける大切な教科

ある中学校で行われた模擬授業では、生徒がロールと芯の半径(r、R)を測り、上の式に当てはめて出したxの解を、実際に数えた巻き数と比較して一致したことを確認しました。生徒たちからは「公式でこんなこともできるとわかって感動した」「食べ物をみんなで分けるときなどに数学を使っていると気づいた」などの感想が寄せられ、数学に興味を持ったことが確認できました。
また、算数、数学で大切なもう一つの要素は、定理や公式が導き出された思考のプロセス、論理的な考え方を理解することです。問題を解くテクニックが重視されがちですが、こうした「考える力」を養うことや、過去の数学者たちの素晴らしい考え方に触れることも、算数・数学教育の重要な目的なのです。

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皇學館大学 教育学部 教育学科 助教 上野 祐一 先生

皇學館大学 教育学部 教育学科 助教 上野 祐一 先生

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メッセージ

数学は答えが一つに決まっているものですが、最初から正解がわからなくてもいいのです。間違っていたとしても、自分で考えて自分なりの解を持つことが大切で、正解とその「自分解」を比較するプロセスがあるからこそ、学びになるのです。「自分解」を持ちそれを堂々と発表できることは、生きていくうえでも大切で、そういう姿勢がないと、誰かの正解ばかり探してしまいます。多数の意見と違っていても、自分の意見のほうが正しいこともあります。「自分解」を持つことの大切さを、数学から学んでほしいです。

皇學館大学に関心を持ったあなたは

本学は、明治15年(1882)年に創立された皇學館を前身とし、官立の神宮皇學館大學を経て昭和37年に再興された、日本でも有数の歴史ある大学です。創立130周年を迎えた歴史を通し、神道を根幹とする建学の精神を一貫して継承。文学部(神道学科・国文学科・国史学科・コミュニケーション学科)、教育学部(教育学科)、現代日本社会学部(現代日本社会学科)の3学部6学科を設置し、学問研究の実践に努めるとともに、独自の人間教育に力を注ぎ、幅広い分野で卒業生は高い評価と信頼を得ています。