アメリカの魂の姿を文学に探る
アメリカ文学の特徴
アメリカ文学が生まれるのは、1776年の独立宣言から20年ほどの1800年前後ですが、1840~50年代には、ボストンを中心としたニューイングランド地方からホーソーンやエマソンなど、大作家たちが登場しました。アメリカン・ルネサンスと呼ばれます。この作家たちは文学の中にアメリカの意味を探り、ヨーロッパからの知的、文化的独立を果たそうとしました。アメリカ人とは何者なのか、何になりうるのか、どう生きたらいいのか、自分たちの苦しみの源は何なのか、そういう問題に取り組み、卓越した文学作品を生みだしたのがアメリカ初期の作家たちです。自分とは何か?に取りつかれた文学――それがアメリカ文学と言っていいでしょう。
アメリカの夢と悪夢と
この作家たちは、聖なる国家としてのアメリカの理想や夢を歌った一方で、国を創っていく時にアメリカが犯し、心の奥底に抑圧してきた罪の記憶をも語りました。例えば、アメリカの白人たちは、自分たちの国土を拡げ、土地を得るためにインディアン(アメリカ先住民)を一掃しました。歴史上、普通、これは「明白な天命」と言われて賛美されます。しかし、実は大勢の異民族を虐殺した記憶は無意識に宿る罪意識となって白人たちに取りつきます。それが、文学では大きな意味を持つのです。例えばスティーブン・キングの現代小説『シャイニング』などが代表的ですが、アメリカの文学には物語の場所が過去インディアンの墓地だったという設定が起こります。昔のインディアン虐殺の記憶が、現代に作用を及ぼす――そういう公文書や歴史書には書かれない精神の真実が、こうした小説に表れるのです。
物語に国の精神を読む
一人の人間が独自の精神を持つように、一つの国も独自の精神や魂を持ちます。そして、文学や文化はその精神の内実を深く表すのです。ひとつの作品を丁寧に読んでいくと、いろいろなことがわかります。アメリカ文学研究の面白さが、ここにあります。
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先生情報 / 大学情報
専修大学 国際コミュニケーション学部 異文化コミュニケーション学科 教授 成田 雅彦 先生
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