スポーツにおける日本最大のパラダイムシフト、部活動改革
どの視点からスポーツの学習環境を見つめるか
スポーツ教育学の範囲は非常に広く、世界中の多くの研究者がそれぞれの視点で分野の発展に向けた研究を進めており、その手法は多岐にわたっています。歴史学や社会学などとの連携の中でスポーツの学習環境を俯瞰(ふかん)的に研究する手法を「鳥の目」的なアプローチだとすれば、主に心理学などと連携した指導方法やそのフィードバックのあり方などが含まれる研究は、ピンポイントな部分にフォーカスした「アリの目」的な手法とも言えます。
大号令のもと進む、部活動改革
スポーツ教育学の分野で現在注目を集めているのが「部活動改革」です。2023年度から国を挙げて大々的に行っている背景には、深刻な少子化と教員の働き方改革による業務削減があり、もはや一刻の猶予もないことから大号令がかけられました。これが軌道に乗れば過去最大級のパラダイムシフトとなるのは間違いありませんが、これまで何十年も続いてきた形からの変革は容易ではありません。学校活動の一要素である部活動を切り離して民間に移行する学校の現場では、問題が山積しています。
成功への鍵は財源と人材
課題の最たるものは財源とその運用法です。地域に移行して運営していくためには資金が必要であり、受益者負担、つまり月謝や移動費といったこれまでの部活動ではなかった出費の負担が原則となります。その場合、例えば生活困窮家庭の子どもたちはスポーツを学ぶ機会を失ってしまいます。そこに対して行政を中心にどのような形で補助をするかが一つのポイントとなります。
また、人材の確保も大きな課題です。学校での部活動とは別の受け皿が必要になったときに、競技を教えられる指導者が地域にどれだけいるのかは未知数です。指導者がいない場合は、働いている社会人の中から競技経験者や有資格者を掘り出す、あるいは資格を取得してもらうことも求められます。また、現状の職場との兼業や兼職ができるような制度を確立するなどといった、社会の仕組みの整備も必要になるのです。
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