宮崎の新婚旅行ブームを生み出した、当時の若者の意識変化とは
皇族の訪問をきっかけに宮崎で新婚旅行ブーム
1960年代から1970年代にかけて、宮崎を旅行先とした「新婚旅行ブーム」がありました。このブームを仕掛けたのは、観光産業を手がけていた地元のバス会社です。きっかけは、皇族の宮崎ご訪問でした。嫁ぎ先の実家が宮崎の佐土原町だった昭和天皇の第五皇女の島津貴子様が、新婚旅行で宮崎を訪問しました。その後、当時の皇太子様が南九州を旅行された際に宮崎に立ち寄られたのです。このことで宮崎が全国的に注目され、それを利用して県外の新婚旅行客を宮崎に呼び込もうとしたのです。
恋愛結婚の割合が見合い結婚の割合を上回った時期
宮崎では「南国」というイメージを作り出すためにフェニックスが植樹され、旅行会社では新婚向け商品が企画されました。またバス会社は海岸沿いを走る新婚旅行バスを運行し、空港ではハワイ風の演出をしました。それを週刊誌などのメディアが取り上げ、多くの新婚旅行客が宮崎を訪れました。イベントとしては大成功でしたが、単なる成功例というだけでなく、もっと深い意味がありました。というのも、この時期に恋愛結婚の割合が見合い結婚の割合を上回ったからです。また、国内人口の占める割合の多い団塊世代の結婚時期であったため、社会に与えるインパクトも大きなものでした。
宮崎への新婚旅行で恋愛結婚であることを自己確認
それまでの新婚旅行は、近場の温泉が一般的でした。ところが、このブームによって新婚旅行にお金をかけ、遠くの場所に出かけるカップルが多くなりました。若い人の間に意識の変化があり、宮崎に新婚旅行に行くことは、カップルが恋愛結婚であることを周囲にアピールでき、自己確認することもできます。もちろん、これらを立証するにはメディアの検証や当事者へのインタビューなどが必要ですが、男女対等の夫婦関係、新しい家族関係を築きたい若い人がこの時期に出現したと考えられるのです。
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先生情報 / 大学情報
宮崎公立大学 人文学部 国際文化学科 メディア・コミュニケーション専攻 准教授 森津 千尋 先生
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