脳の学習プロセスを明らかにし、多様で適切な教育に役立てる
脳の高度な働き
知的な発達に遅れがなくても、「聞く・話す」「読む・書く」がうまく習得できない障害を「学習障害」といいます。「聞く・話す」「読む・書く」はできて当然と思う人もいますが、実はそうとは言い切れません。例えば「ヘリプコター」という文字が書かれているとき、多くの人は瞬時に「ヘリコプター」と読みます。これは、漢字を読むときと同様に、脳内でカタカナを一文字ずつではなく「かたまり」と認識し、処理しているからです。このように、単語を読む行為だけでも頭の中で複雑な処理がなされていることを知れば、「聞く・話す」「読む・書く」がうまく習得できない人たちを「勉強不足」「努力不足」と決めつけることはできないはずです。
認知神経心理学とは
心理学には、脳に目立った不具合がない人を対象に、「認知モデル」を使って認知活動を研究する「認知心理学」と、事故や病気などによる後天的な障害や、遺伝などの先天的な障害がある人を対象に、精神や脳の働きについて研究する「神経心理学」があります。そしてこの両方に共通する要素を備えた「認知神経心理学」もあり、「認知モデル」を用いながら、脳に障害がある人のどこに不具合があり、読み書きや言語の習得の遅れの原因は何なのかを探っていきます。
多様性の時代に
これまでの研究で、「聞く・話す」「読む・書く」能力を獲得するプロセスは非常に多様であり、学習障害がある人とそうではない人を明確に分けられないことがわかっています。こうした知見を学校教育の現場に提供し、より多様な学習・支援のあり方へとつなげることも、認知神経心理学の重要な役割です。
また、グローバル化が進み、日本の学校にも外国にルーツをもつバイリンガル・マルチリンガルの子どもが増えています。そうした人たちが「聞く・話す」「読む・書く」力の習得に問題を抱えている場合、その要因が多言語にあるのか、それとも発達によるものなのかを明らかにする上でも、認知神経心理学が役立てられています。
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先生情報 / 大学情報
筑波大学 人間学群 障害科学類 助教 三盃 亜美 先生
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認知神経心理学、特別支援教育先生が目指すSDGs
先生への質問
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