当たり前ではない読み書き能力 苦手な子どもをどう支えるか?

当たり前ではない読み書き能力 苦手な子どもをどう支えるか?

あるのが当たり前とは限らない

高い山に登ると、平地には十分な酸素があることに気づくものです。人間の場合も、当たり前にいつの間にかできるようになったと思っていることが、実はそうではないとわかることがあります。例えば簡単な読み書きも、最初から誰もができるわけではありません。

読み書きを可能にする条件

生まれたばかりの赤ちゃんは、文字の読み書きができません。それをするための能力がまだ芽生えていないからです。読み書きを覚えるには、必要な能力が芽生えていることや、周囲に文字を使っている環境があること、そして教育のように読み書き能力と文字をつなぐ他者の関与が必要だとわかってきました。ただし、こうした条件がうまくかみ合わず、読み書きが思い通りにできない「ディスレクシア」という障害を抱える子どもも見られます。読み書きに困難を感じるだけでなく、勉強そのものが大変になったり、人間関係がうまくいかなくなったりと、多くの悩みを抱えがちです。

障害に寄り添った教え方

言葉を文字ではなく音の単位としてとらえる力を「音韻意識」といいます。例えば「りんご」は3音、「もも」は2音で構成されています。ディスレクシアの子どもの中には、音韻意識の発達に時間がかかったり、脳の機能がうまく働かずに音をとらえにくくなったりしている子もいます。そこで音韻に慣れるために、単語を発声するのに合わせて手を叩いたり手を握ったりするなど、音の動作化が実践されたりします。「らっぱ」と言いながら「パン、グー、パン」とするような練習です。こうすることで1音1音の区切り、促音などの特殊な音の見極めを意識しやすくなります。こうした教え方は従来の授業内容とは違い、すでに読み書き能力を持つ子どもたちには不要でしょう。ただしその教え方を必要としている子には、読み書きの入門段階でつまずきやすい部分を克服するきっかけになることがわかってきました。障害が原因で伸び悩んでいる能力を高めたり、困難を緩和したりできる教え方をさらに見つけようと、研究が続いています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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福山市立大学 教育学部 児童教育学科 教授 今中 博章 先生

福山市立大学 教育学部 児童教育学科 教授 今中 博章 先生

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障害児心理学、特別支援教育

先生が目指すSDGs

メッセージ

障害の特徴や、障害のある人への支援などを学問として学びたければ、身の回りのあらゆる物事を「それがあって当たり前」だと思って見過ごさないような姿勢を持ってほしいです。こうした意識は、あなたが普段生活している中では必要性がないかもしれません。しかしあえて意識してみると、多くの発見が得られるはずです。また、障害のある人と接していると、あなた自身が考えさせられることもたくさんあると思います。ぜひ高校生のうちから観察眼や思考力を鍛えて、大学に来てもらえると嬉しいです。

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福山市立大学は、福山市が設置する公立大学、4学期制による効果的な履修、4年間を通じた少人数参加型授業や、街と一体となったキャンパスを拠点に、福山市全体をフィールドとした体験型授業の充実が特色です。公立大学の特色を生かし、教育学部では地域の教育・保育施設との連携により実践力のある教育者・保育者を目指します。都市経営学部は全国初の学際的な学部で、環境を基盤として工学系、経済学系、社会学系の3つの領域を総合的に学び、持続的な都市社会の発展を担える人材を育成します。