人間は「自分勝手」な行動をやめられるのか?
人間の駆け引きを数学的に分析する
社会の中で、私たち一人ひとりがそれぞれ自分勝手な行動ばかり選択していると、環境破壊や移民排斥、不毛な戦争など、社会全体が望ましくない状況に陥ってしまいます。ではどうすれば人間は「自分勝手」な行動をやめられるのでしょうか? その可能性を、人間同士の駆け引きを数学的なモデルで表す「ゲーム理論」によって追求する研究があります。
たこ焼き屋さんのジレンマで考える
ある場所に、2軒のたこ焼きの屋台が出店しています。彼らは自分の店のたこ焼きを1舟400円で売るか、300円に値引きして売るかで迷っています。2軒とも400円で売れば、どちらもそこそこの売り上げが見込めます。自分が300円で相手が400円なら、自分の売り上げがぐっと高くなり、相手の店は全然儲かりません。逆に自分が400円で相手が300円なら、相手は大きく儲かりますが自分はまったく儲かりません。しかし、自分も相手も300円だと、両方が400円の場合より売り上げが落ちてしまいます。こうしたジレンマのある状況下で、どんな戦略を選ぶと最も良い結果になるでしょうか? 例えば「自分からは値段を変えないが、相手が変えたらすぐ対応する」など、さまざまな戦略が考えられます。この例はゲーム理論において最もシンプルなジレンマですが、関わる人間の数が増えると、状況はより複雑になり、戦略も一筋縄ではいかなくなります。
社会は「利他的行動」で成り立っている
実は人間社会は、利己的な行動をするだけではなく、「自分にとってマイナスだが、ほかの人にとってプラスになる行動(利他的行動)」を選ぶ人がいるからこそ成り立っている部分があります。しかし、「自分勝手」や「自集団勝手」をやめることはとても難しいものです。だからこそ、それによって社会全体が取り返しのつかない事態に陥ってしまわないように、私たちは知恵を絞り、話し合い、よりよい方向をめざしていく必要があるのです。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 文学部 社会学科 教授 大浦 宏邦 先生
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