ベテランの知恵を、知識工学で未来に伝える!
知識を記号化する
AIや機械学習などを活用したデータサイエンスを発展させるためには、さまざまな人間の知識をコンピュータでも認識できる形に置き換える必要があります。コンピュータは文字や数字などの記号で書かれたものしか処理できないからです。知識の記号化に取り組む「知識工学」の研究が進むにつれて、この分野が活用できる場面はデータサイエンスだけに留まらないことがわかってきました。
マニュアルの不足部分を補う
ロボット製造工場で使う組み立てマニュアルには最低限の手順しか書かれていません。専門家はマニュアルに載っていない内容も知識や経験で補えるため、問題なくロボットを組み立てられます。しかし一般の人がマニュアル通りにこなしても、ロボットを組み立てることは難しいでしょう。専門家の知識をマニュアルに加えれば、一般の人でもロボットを組み立てられるようになるはずです。そこで知識工学の研究者がロボットの組み立て現場でビデオ撮影や調査を行い、「知識の記号化」を行いました。まずはビデオを参考に、目に見えるすべての動作を順番に文章で記述します。さらに作業している人から聞き出したコツなど、現場のノウハウもマニュアルに追加します。最後にロボット組み立てのベテランがアドバイスや追加の手順を書き入れて、専門知識のない人でもわかるマニュアルが作られました。このように記号化された知識は、ロボット組み立ての新人研修や機械学習にも活用されています。
失われていく知識を残す
現場で培われたベテランのノウハウは今後さらに失われていくと予想されており、製品の品質が低下するのではないかと問題視されています。実際にベテランが引退した工場ではノウハウが継承されず、製品の質が低下した事例があります。失われつつある知識を記号化してマニュアルやAIなどに落とし込めば、未来に残すことが可能です。知識工学の専門家と現場が協力し合うことで、ベテランの引退で困っている会社などを救えるものと期待されています。
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