薄い酸素+運動でメタボも解消!? 低酸素トレーニングの可能性
アスリートが高地トレーニングを行う理由
スポーツ選手の行う高地トレーニングはよく知られています。高地は、平地に比べて気圧が低く空気中の酸素分圧が下がる、いわゆる「低圧低酸素」環境です。低圧低酸素環境に滞在すると血液中の赤血球が増加するため、筋肉により多くの酸素を運搬できるようになります。つまり平地にいる時より体内に多くの酸素を取り込めて持久力がアップし、高地トレーニングをした後に平地に戻ってきても、しばらくその効果は続くとされています。現在では平地で気圧はそのままに酸素濃度を低く調節した常圧低酸素ルームでもトレーニングが行われ、同様の効果が得られることが確認されています。
低酸素下での運動は一般人にも効果的
近年、こういった環境下での運動が、一般の人にもよい効果をもたらすことがわかってきました。単に持久力をアップするだけでなく、血糖値を下げ、動脈スティフネス(硬化)に対しよい影響を与えることが実証されてきたのです。これは、中高年の生活習慣病の要因であるメタボリックシンドロームを予防・改善することもできるということです。中高年を中心とした登山ブームは、体力増強以外の面でも理にかなっていると言えます。
将来は高地滞在型の健康医療施設ができる?
低酸素下では、NO(一酸化窒素)など血管の内皮を柔らかくする物質の分泌が増えます。そこに運動を加えるとたくさんの血液が血管内を流れ、さらにNOが分泌されます。また、血液中の糖が効率的に筋肉に取り込まれるので、血糖値が下がるというわけです。問題は2000m以上の高度下で1日30分の運動を週4回程度、2週間は続けないと明確な効果が得られない点です。しかし将来的に低酸素ルームの普及や、高地に滞在型のスポーツ施設ができれば、病気予防・健康増進の新たな力となる可能性を秘めているのです。
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阪南大学 総合情報学部 総合情報学科 教授 黒部 一道 先生
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