ランニング・ブームを巻き起こしたマスメディアの力
人はなぜ走るのか
いま日本は、空前のランニング・ブームを迎えています。古代、人間が走るのは、食料となる動物を追うか、自分が危険から逃れるためでした。それが次第に、メッセージを伝えるために、走ることを仕事にする人たちが現れました。ランニングが大衆的なスポーツになったのは、19世紀の終わりのことです。産業革命で肉体労働が減ったため、運動不足を解消しようと人々は走るようになりました。
きっかけは「東京マラソン」
日本のランニング・ブームは、第1次が高度成長期の頃で、スター選手の競技を観戦する「見るスポーツ」の側面が強いものでした。現在のブームは第2次で、成人の1000万人以上が走ることを楽しんでいると言われます。
爆発的に市民ランナーが増えたきっかけは、2007年に初めて開催された「東京マラソン」です。その成功を受け、各地で市民マラソンの大会が開かれるようになりました。名所や世界遺産をまわる観光の要素を加えたコースや、高速道路や飛行場の滑走路など、普段は走ることができない場所をコースにした大会が人気を呼んでいます。
メディアが伝える「走る楽しさ」
ランニングは、手軽に楽しめて健康に良いスポーツとして親しまれています。このイメージを定着させ、ブームに導いた一因は、雑誌やテレビなどのマスメディアです。ランニングコースをはじめ、有名人や市民マラソンの個性的な参加者を紹介したり、シューズやウエア、帽子、時計など、「ギア」と呼ばれる装備をさまざまな手法で広告したりしました。これが初心者にとって、「走る楽しさ」を伝える格好のマニュアルになったのです。
日本のランニング・ブームは、ファッションにこだわる人が多いことも特徴です。思い思いのギアを身にまとい、いつもと違う自分を演出することで楽しさが増すのでしょう。日本は昔から、茶道や剣道などのように、精神性や作法を含めて究めることが重視されてきました。その意味で日本には、「ランニング道」があると言えそうです。
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山口大学 国際総合科学部 国際総合科学科 教授 マルク レール 先生
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