どこが同じで、どこが違う? 似ている日本語と韓国語の対照研究
共通点の多い日本語と韓国・朝鮮語
日本語と韓国・朝鮮語(以下韓国語)は、文法的に非常に近い性質をもっています。英語の語順は主語(S)→動詞(V)→目的語(O)と続きますが、日本語と韓国語はS→O→Vです。また、主語や動詞などの間を助詞(日本語における「てにをは」)でつなぐという構造も、日本語・韓国語に共通しています。ですから「太郎はりんごを食べた」という日本語の文章は、それぞれの単語と助詞を韓国語に置き換えるだけで意味が通じます。1カ月間本気で勉強に取り組めば、辞書を片手に簡単な会話ができるほど、両者は似た言語なのです。
指示詞における微妙な違い
指示詞とは、談話が行われている現場に存在したり談話の中で登場する指示対象を指し示すために使われる言葉のことです。指示詞も日本語と韓国語に共通して存在し、ともに「こ・そ・あ」の三項対立を持っています。両者は、話し手からの距離を基準に、近距離は「こ」=이(イ)、中距離は「そ」=그(ク)、遠距離は「あ」=저(チョ)を使って指したり、話し手と聞き手の縄張りを中心に「こ」=이(イ)と「そ」=그(ク)が対立したりします。
しかし、両者には違いもあります。例えば、話し手と聞き手が知識を共有している出来事について話す時、日本語では「あの件はどうなった?」「あの件は無事完了しました」と「あ=遠称」で指し示しますが、韓国語では「その件はどうなった?」「その件は無事完了しました」と「그(ク)(そ)=中称」で示します。つまり、共有知識を指示詞で指し示す場合は、日本語と韓国語では用法が明確に異なっているのです。共通点の多いだけに、こうした違いは両言語の使い方の混乱を招いたりもします。
体系的な文法理論を確立する
言葉を研究する言語学には、日韓対照言語学という分野があります。両言語の共通点と相違点を洗い出すだけでなく、文法的な裏付けを踏まえて分析します。これによってより信頼性の高い体系的な文法理論が確立され、またそれぞれの言葉を習得する際の重要な指針にもなるのです。
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先生情報 / 大学情報
天理大学 国際学部 韓国・朝鮮語学科 教授 金 善美 先生
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言語学、日韓対照言語学、記述言語学先生が目指すSDGs
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