モダンガールが描くモダンガール―文学とジェンダー

モダンガールが描くモダンガール―文学とジェンダー

1920年代に現れた「モダンガール」

ドイツがワイマール共和国と呼ばれていた1920~30年代、第一次世界大戦に敗北し、政治的にも経済的にも意気消沈していたドイツ社会の中で、若く元気な女性たち、すなわち「モダンガール」が大きな注目を集めることとなります。当時、飛躍的に発展したマスメディアは、都市化が急速に進む中で出現した新しい職業、タイピストやデパートの販売員などの職に就いた、若くておしゃれな女性たちをモダンガールともてはやしました。そのイメージは女性の新しい生き方を提示する華々しい存在として、賛否両論がありながらも社会の中で広がっていきました。

モダンガールの描くモダンガール

モダンガールとして脚光を浴びた女性たちの中から、雑誌や小説の書き手として活躍する人も現れるようになります。モダンガールという言葉からはキラキラしたイメージが想像されますが、当時のモダンガール世代の女性作家たちの作品では、マスメディアの伝えるこうしたイメージとは異なり、彼女たちの抱える苦悩が描かれています。例えばイルムガルト・コインの主人公は、「おしゃれでもしていないと、自分には何も価値がない人間になってしまう」と告白します。当時、高等教育を受けた女性は少なく、また教養の有無はどんな家に生まれるかに関係しています。若い女性が社会の中でちやほやされるのは、刹那的な「若さ」だけが評価されているだけなのだという苦悩を、コインは文章の中につづったのでした。

ジェンダーの視点から女性作家の作品を読み直す

ナチ時代のドイツでは、残念ながら、ナチの理想の女性像に反する、コインのような若い女性の書き手は、表舞台から姿を消してしまいました。
モダンガール世代の女性作家の作品を読むと、当時の若い女性たちが抱えていた苦悩は、時代や地域は異なっても、現代にも通じていることに気づきます。1920~30年代の女性文学研究は、ジェンダー研究の観点からも大きな意義があるのです。

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学習院大学 文学部 ドイツ語圏文化学科 教授 田丸 理砂 先生

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ドイツ文学、ジェンダー研究

先生が目指すSDGs

メッセージ

わたしたちの生きる社会には、国籍やジェンダーに限らず、多様な人びとが暮らしています。人の移動はますます活発化し、インターネットによる交流も今後さらに広がっていくでしょう。そうした時、自分の価値観や知識は絶対的なものではなく、ごく限られたものだと自覚することは大切だと思います。ついつい「日本人は」「男性は」と大きな主語で物事を捉えがちですが、その定義を改めて問い直してみましょう。そのためにも、さまざまな文学作品や映画などに触れ、是非より広い視野を育んでください。

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