地図のデジタル化は、社会をどう変えたのか?
スマホで地図を利用する時代
目的地に行くとき、スマートフォンなどで地図を確認する人は多いでしょう。そこには、半世紀の歴史を持つ地理情報科学という学問の成果が生かされています。地理情報科学とは、さまざまな地理的な情報を管理・活用するための研究で、1990年頃から急速に発達してきました。具体的には、「地図のデジタル化」が始まったのです。紙の地図ではできなかった、複数の情報を重ねて表示することが、デジタル化によって可能となり、道路の渋滞情報のように、通信と結びつくことで、リアルタイムの情報も反映できるようになりました。
車の自動運転にも地図情報を活用
現在は、人工衛星による映像をはじめとする、膨大な地理情報が蓄積されています。そのデータを管理・活用するのが、GIS(地理情報システム)です。経度・緯度・標高の3つの情報さえあれば、すぐに地球上での位置が特定でき、その地点のデータを得ることができます。
自動車のカーナビもそうですが、近年開発が進んでいる、自動運転(セルフ・ドライビング)技術にも、GISが生かされています。車線を外れることなく車が自動で走るシステムの運用には、正確な地図情報が必須なのです。
デジタル化でよみがえる事実も!
デジタル地図には、古い地図を現在の技術でよみがえらせる力もあります。例えば、昔、沖縄の一部の島では、蚊によって媒介される感染症・マラリアが流行し、多くの人が亡くなりました。地形などの情報をデジタル化し、古い地図を現在のデジタル地図と重ね合わせることによって、20世紀前半の地理的環境をコンピュータ上で復元すると、水に溶けやすい石灰岩が多く、くぼ地ができてそこに水がたまり、蚊の発生しやすい環境であったことがわかりました。こうした結果は、ほかの地域での蚊の発生予防や対策に生かすことができます。
デジタル地図は、ハザードマップ作りなどの防災や、交通、観光、教育などにも関わってきます。もはや社会のインフラと言える存在なのです。
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先生情報 / 大学情報
立正大学 地球環境科学部 地理学科 教授 鈴木 厚志 先生
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