なぜ今、企業は「サステナビリティ経営」に取り組むのか?
20世紀までの企業経営は「もうけること」
近代経済学の父と呼ばれたアダム・スミスが、18世紀に『国富論』の中で「神の見えざる手」を提唱しました。これは、市場経済において「個人や企業が自分の利益を追求すれば、結果として社会全体で適切な資源配分が達成される」という考え方で、資本主義の骨格となっています。これにより、社会では長い間「企業はもうけのみを追求すれば良い」と考えられてきました。
20世紀に入ると、この考え方はさらに強化されました。経済学者のミルトン・フリードマンは「企業は株主の所有物であり、株主の利益だけを考えれば社会貢献になる」という考え方を提唱し、多くの企業がその考えに従って、株主の利益を追求した経営を行ってきました。
もうけ至上主義に走った末の弊害
しかし、行き過ぎた利益追求は、消費者が被害を受ける大きな問題を引き起こしました。その代表例が「エンロン事件」です。1990年代、アメリカのエネルギー事業者・エンロンは株主の利益を優先するあまり、粉飾決算に手を染めました。さらに、電力取引を金融派生商品として売り出すことで、自社の利益を最大化しようと画策しました。ありもしない電力取引をでっち上げたり、意図的に停電を起こして電力価格をつり上げたりと、一般市民が迷惑を被る傍若無人な企業行動を重ねたのです。
サステナビリティの実現
エンロン事件やリーマンショックなどの「もうけ至上主義」によって発生した数々の問題を踏まえて、企業の社会的責任(CSR)が叫ばれるようになりました。加えて、格差やジェンダー平等、環境保全などにも議論が広がり、現在では企業活動の中で社会問題の解決も合わせてめざそうとする「サステナビリティ経営」に注目が集まっています。従来のCSRとは異なり、ビジネスとして利益を上げながら、CO₂削減や人権の保護、格差解消といった問題解決に貢献することが求められています。サステナビリティを意識しなければ、企業が生き残っていけない時代に突入しているのです。
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