韓国の日本式家屋に見る、まちづくりと歴史を超えた共生の試み

韓国の日本式家屋に見る、まちづくりと歴史を超えた共生の試み

「敵産家屋」が語る歴史の多面性

日本が韓国を統治していた時代、韓国には日本によってさまざまな建造物が建てられました。これらの建築物は解放後に取り壊されたものも多くあります。しかしこの時代に建てられた一部の日本式家屋は、実は今も韓国に残されています。現地の人々は、そうした建物を「敵産家屋」と呼びます。この言葉を聞くと、とても不穏な印象を受けるかもしれません。しかし地元の人々にとって、今は必ずしもネガティブな意味の言葉ではないようです。こうした家屋は1945年の解放後も残されて人々の生活の中で使われ続けてきたため、複雑な歴史がありつつも自分たちが暮らしてきた家としての愛着も見られます。

生活に溶け込んでいった日本式家屋

解放後も残された日本式家屋は、当初はそのままの状態で使われていましたが、時間がたつにつれて韓国の文化に合わせた改修が加えられていきました。畳の部屋は韓国の寒さに対応できるようにオンドルという韓国式の床暖房に改修されて、また、韓国の風習に合わせて玄関の代わりに縁側のような出入り口が作られたりなど工夫がされています。ただ使い続けられてきたのではなく、地元の人々に手入れをされた過程を経て、日本式家屋は現地の生活に溶け込んでいきました。その歴史を超えて地域の一部として受け入れられて、新たな価値を生み出していったのです。

都市の歴史をつないでいく試み

現在、韓国では町の再開発が進む一方で、古い建物を文化財として保存・活用し、町の記憶をつないでいこうとする市民団体の活動も活発です。一部の日本式家屋は、カフェや図書館、博物館などとして公開されて、新たな社会的・文化的な交流の場として活用されています。日本統治時代の建物は、単なる歴史の遺物ではありません。工夫して利用され続けてきた積み重ねを通して、その土地に暮らした人々の物語を伝えています。歴史を大切にしつつ、それが現代のコミュニティにどのような価値をもたらしていくのか、まちづくりの模索が行われています。

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跡見学園女子大学 観光コミュニティ学部 まちづくり学科 准教授 松井 理恵 先生

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メッセージ

何かに挑戦する時、最初は「自分には向いていない」と思っていたことでも、実際にやってみると意外な発見があるものです。もしかしたら自分の可能性を狭めていたのは、自分自身の思い込みなのかもしれません。私自身、高校生の頃は今の研究をするなんて全く想像もしていませんでした。でも、大学生になって世界が広がり、いろいろなチャレンジをすることで、知らなかった世界が開けました。苦手意識を持っていたことでも、ちょっと興味があるなら、まずは食わず嫌いせずにトライしてください。

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跡見学園女子大学では、1875(明治8)年の「跡見学校」開校以来、社会に柔軟に対応できる自立した女性を育成しています。この伝統を背景に、学生一人ひとりが4年間を通して、自分らしい生き方を見つけ、社会に出てからも自分の人生をデザインするための「ライフデザイン教育」を推進しています。その拠点になるのが2つのキャンパス。1・2年次は緑豊かな新座キャンパスでじっくり学び、3年次からは都心の文京キャンパスで学修。社会と関わりを持ちながら成長していくことができます。