時代を映す鏡? 祭りから考える都市の過去と未来

時代を映す鏡? 祭りから考える都市の過去と未来

祭礼から読み解く都市の歴史

山車などの飾りがついた車両をひき回す、いわゆる「曳山祭」に代表される都市祭礼は、その都市の歴史を映し出す鏡のようなものです。そのルーツは江戸時代にさかのぼります。当時の祭礼は、藩主が町民に命令して開催させたり、金銭的な補助を出したりと、為政者の意向を色濃く反映したものでした。祭礼の行列は藩主の前で披露されるなど、為政者の権威を示す場であったのです。また、為政者への不満が爆発しないよう、祭礼を通じて民衆の不満のガス抜きをしようとする意図もありました。一見すると華やかなお祭り騒ぎも、実はその時代の都市の政治・経済・社会の状況を如実に表しているのです。

少子高齢化で見られる祭礼の変化

現代の都市祭礼からは、どのような時代が見えてくるでしょうか。今、各地の祭礼は少子高齢化の影響により存続の危機に直面しています。しかし、そんな中でも知恵を絞って祭礼を守ろうとする人々の努力によって、新しい形の祭礼が生まれています。例えば、インターネットで全国から祭りのボランティアを募集したり、海外からの参加者を受け入れたりするなど、地域や国の枠を越えた人々の協力によって祭礼が支えられているのです。多様な人々が祭礼に関わることで、伝統を守りつつも新しい価値が生み出されています。

祭礼がもたらす人々の新しい絆

都市祭礼は、江戸時代から現代まで、常に時代に適応しながら継承されてきました。不要なものであれば、時代の変化とともに消えていたはずです。祭礼は、人と人とを結びつける力を持っています。「祭縁」とも呼べるその絆は、祭りを通じて出会った人々の間に生まれる、地域を越えた結びつきです。例えば、転出者にとって祭りは盆暮れ正月に代わる帰省の機会となっていますし、遠方から参加したボランティアと地元の人々との間に友情が生まれることや、海外からの参加者とのつながりが新たなビジネスにつながる可能性もあるでしょう。人と人とを結びつける祭礼の力は、これからの時代にこそ必要とされているのではないでしょうか。

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龍谷大学 社会学部 総合社会学科 現代社会領域 ※2025年4月新設 教授 吉田 竜司 先生

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社会学、歴史学

メッセージ

大学に入学したら、学びを通して知的好奇心を追求する楽しさを体験してほしいです。文献を読んだり、現地に赴いて調査をしたりすることは、面倒に感じることもあるかもしれませんが、そうした努力の先にこそ自分だけが知る新しい発見があります。その発見がもたらす喜びは苦労を上回るほどに大きいもので、一度その喜びを味わうともっと知りたいという欲求が湧き上がり、さらなる学びへの原動力になるでしょう。ぜひ大学で、知的探究の面白さを実感し、自らの可能性を広げていってください。

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あらゆる「壁」や「違い」を乗り越えるために、「まごころ」を持ち、「人間・社会・自然」について深く考える人を育む。それが、龍谷大学の教育のあり方です。自分自身を省み、人の痛みに感応して、他者を受け容れ理解する力を持つ。人類が直面するリアルな課題と真摯に向き合う。そして様々な学びを通じて本質を見極める目を養い、自らの可能性を広げていきます。