アートマネジメントが音楽の価値をつくり出す
音楽の価値とは
音楽の価値はどう決まるのでしょうか。例えば、コンサートを開催するには、会場の使用料やスタッフの人件費などのコストが発生します。しかし、同じ会場でも演奏者によってチケット代金が大きく異なるように、単にコストや時間だけでは換算できない要素が存在します。
音楽の社会的価値と位置づけ
クラシック音楽が西洋から輸入され、西洋の芸術音楽というだけで珍重されていた時代には、批評家や権威のある人々による評価が社会的価値を形成していました。ある種、閉じられた世界であったともいえるでしょう。しかし現代では、誰もが自由に音楽を表現でき、アマチュアが楽曲をSNSに投稿したり、ストリートピアノで演奏したりするなど、発表の場は開かれたものになっています。インターネットの普及に加え、プロの音楽家によるボランティア活動など、気軽に音楽を耳にする機会は増大しています。このような状況は、社会全体に芸術文化の裾野が広がった結果ともいえますが、その反面、音楽の社会的な位置づけを変化させてきてもいます。例えば、無料で様々な音楽を楽しめる環境は人々の生活を豊かにしましたが、同時に音楽産業の構造を大きく揺らがしてきました。
アートマネジメントの重要性
芸術文化を持続・発展させていくためには、単に社会に提供するだけでなく、そこに適切な価値を創出していく必要があります。「アートマネジメント」は、音楽や美術などアートの作り手と受け手とを結びつけ、アートを介して人と人とをつなぎ、さらに、文化芸術の価値を創出していくという役割を担っています。また、文化の担い手全体が持続可能な活動を行うための<仕組みづくり>への貢献も期待されています。例えば、クラシック音楽が伝統文化でもある西洋諸国では、法制度が芸術家の活動を支えています。日本でも音楽文化や舞台活動に対する法の整備が進んできました。音楽文化の多様化、グローバル化が進む現代においては、どのような音楽を日本の文化として振興していくべきかを考えていくことが特に重要です。
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先生情報 / 大学情報
エリザベト音楽大学 音楽学部 音楽文化学科 教授 壬生 千恵子 先生
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アートマネジメント論、音楽文化学先生が目指すSDGs
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