受粉なしでも勝手に実がなる野菜品種

受粉なしでも勝手に実がなる野菜品種

受粉しなくても実がなる?

植物には、受粉しなくても実がなるものがあり、その性質を「単為結果性」と呼びます。実は、日本で栽培されているキュウリの多くは単為結果性の品種です。ハウス栽培などの密閉された環境では、風や野生の昆虫が受粉を担ってくれないので、農家さんは実をつけるために手作業で花の一つ一つに植物ホルモンを処理したり、マルハナバチなどの訪花昆虫を放ったりする必要があります。しかし単為結果性品種であれば、勝手に実が大きくなってくれるので、そのような処理や訪花昆虫は必要なく、より安価で効率的な果実の生産が可能です。

単為結果性品種を探せ

現在、実をつける野菜で単為結果性を持つ品種の探索や開発が行われています。日本には作物や野菜の遺伝資源を保存する「ジーンバンク」という機関があり、そこに保存されている遺伝資源から単為結果性を持つ品種を調査します。これまでにメロンやカボチャで単為結果性品種が見つかっており、今後、単為結果性を持つメロンやカボチャの実用品種が開発されるかもしれません。

DNAマーカーの開発と遺伝情報の利用

ある野菜で単為結果性の品種を発見し、その原因となる遺伝子を特定できれば、単為結果性の有無を識別できるDNAマーカーを作ることができます。通常、品種育成の中で単為結果性があるかを調べるためには実がなるまで育てて調査する必要がありますが、これには非常に時間と労力がかかります。しかし、DNAマーカーさえあれば、小さい苗の状態で単為結果性の有無を確認できます。これにより単為結果性品種の開発が非常に効率的になります。また、ある野菜で単為結果性遺伝子を特定できれば、その遺伝子と似た遺伝子を利用することで別の野菜で単為結果性品種を作れる場合があります。実際に、ナスで見つかった単為結果性遺伝子をトマトやトウガラシで利用した例が知られています。日本の農業人口は高齢化によって年々減少傾向にあります。農業の省力化につながる単為結果性品種の開発は日本の農業を存続させる鍵になるはずです。

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龍谷大学 農学部 農学科 准教授 滝澤 理仁 先生

龍谷大学 農学部 農学科 准教授 滝澤 理仁 先生

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