日本の農業・農村を未来につなぐために
労働力不足問題
農業者の高齢化や担い手不足、耕作放棄地の増加など日本の農業の未来を不安視する声は日増しに高まっています。日本の農業・農村を未来につなぐために、いま私たちに求められることは何か?それが問われています。現在では、自然科学分野のみならず社会科学分野からも、農業のスマート化による生産性向上など課題解決のために多くの研究が行われていますが、大規模法人だけではなく、日本の農業・農村を支える家族経営農家や兼業農家など、中小規模の農家への対策も必要不可欠です。
課題の一つは、労働力不足です。農業の人的資源問題といえば、後継者不足が中心的課題として語られてきましたが、昨今では定植や収穫など、繁忙期の作業を担う人材の不足が喫緊の課題となっています。この時期の労働力不足が年間の農業経営に影響を与えて、離農を余儀なくされるケースがあるからです。このような一時的な人材不足について、JAのような中間的組織が、労働力の供給を促進する役割を担うことができないか研究されています。
優良品種の保護
日本農業の国際競争力強化と生産者の収益力向上を目的として、国は農業分野の知的財産権の保護活用を積極的に推進してきました。しかしながら、近年わが国の優良な品種が海外に流出し、多大な逸失利益を発生させる事案が多数報告されています。日本の農業者を守るためにも、品種保護および活用の新たなシステムを構築し、持続的な品種開発を可能にする必要があります。
「世界農業遺産」の農業システム
日本のみならず世界中に、古くから受け継がれた伝統的な農業システムがあります。例えば、静岡県の水わさび栽培や和歌山県南部地域の梅など、いくつかの伝統的農業システムが国際連合食糧農業機関(FAO)から世界農業遺産として認定されています。多くの伝統的農業システムが消滅する中で、これらのシステムが現代まで残り続けている理由を解明することは、日本の農業・農村を未来につなぐために重要な研究課題と言えます。
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