走査プローブ顕微鏡で、「見て」解き明かすナノスケールの世界

走査プローブ顕微鏡で、「見て」解き明かすナノスケールの世界

見えないものを「見る」技術

原子レベルのナノの世界を「見る」顕微鏡があります。それが走査プローブ顕微鏡です。先端の曲率半径が約10ナノメートルの微細な針(プローブ)を試料に近づけて、試料とのあいだに働く物理的な相互作用を検出し、試料の形状や電位、磁気、熱などを調べる顕微鏡です。そうして調べられた特性は色の濃淡で表した画像に変換されるので、視覚的に見ることができます。走査プローブ顕微鏡の開発を含めて、ナノスケールでの物質の計測や評価についての研究が行われています。

ナノの視点で性能を評価

その一つが熱電材料についての研究です。熱電材料とは、一般的に温度差により生ずる電位差で発電する固体材料で、現在は大量に捨てられている使いにくい温度帯の熱を有効利用できるものとして期待されています。また熱電材料は長時間発電ができるため、太陽系外を旅する探査機ボイジャーにも使われています。
高性能で安全な熱電材料の開発が進められていますが、熱電材料にナノスケールの構造物を付けると性能があがることがわかっており、取り付けたナノ構造が熱電物性にどう影響しているのか調べられています。走査プローブ顕微鏡で加熱時におけるナノスケールでの現象を観察したところ、場所による温度変化がある程度均一な中で局所的に電位が変わっていることがわかり、さらに詳しく調べられています。

氷の表面をリアルタイム観察

氷は私たちの身近にある物質ですが、氷がどのように成長していくのかは、実はまだよくわかっていません。走査プローブ顕微鏡による観察で、マクロな計測ではとらえられない数ナノメートルの厚さの液体の水の層が氷の表面に存在していることがわかってきました。この水の層の性質について研究が進められています。
また走査プローブ顕微鏡は、試料とプローブ間に働く相互作用を画像化する際にタイムラグが生じます。氷の成長をリアルタイムで観察できるような高速の走査プローブ顕微鏡の開発も進められています。

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龍谷大学 先端理工学部 電子情報通信課程 准教授 宮戸 祐治 先生

龍谷大学 先端理工学部 電子情報通信課程 准教授 宮戸 祐治 先生

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計測工学、ナノ材料科学

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メッセージ

あなたに一番伝えたいのは、自分が熱中できる何かを見つけてほしい、ということです。ことわざにも「好きこそものの上手なれ」とあるように、「好き」に勝るものはありません。研究はもちろんスポーツの世界でも、時間を忘れて熱中できることは技術が上達し、継続にもつながります。やっていて自分が楽しいと思えるところまで続けることが重要です。最近は、何かに取り組んでみても長続きせずにやめてしまう人が多いように感じます。ものごとの面白さはある程度続けてこそわかるので、ぜひちょっと頑張って続けてみてください。

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