同じ植物でも違う! 明らかになった環境適応能力
植物には優れた環境適応能力がある
植物の細胞が環境を感じることを「感知」、変化に対処することを「応答」と言います。アブラナ科のシロイヌナズナの研究において、研究室の最適温度(22℃)で育てられた個体と、冬の屋外に自生している個体の葉や茎の様子が異なることが着目されました。気温や光量の測定で、朝晩で気温が10度程度変化することや、周囲の木の葉が風に揺れることで屋外の個体に当たる日光の量がちらちらと浮動していることが判明しました。そのような「浮動する環境」の元で、植物がどのように振る舞い、対処しているのかを探る研究が進んでいます。
温度によって形を変えるタンパク質
「浮動する環境」を研究室で再現して±6℃で調べたところ、16℃では茎や葉が短くなり、28℃では長く伸びました。28℃なのに伸びられなくなった変異体を探し、その変異体を調べる研究により、温度によって形を変えるのに必要なタンパク質が発見されました。そのタンパク質が鍵となり、シロイヌナズナの茎や葉が伸びたり、短くなったりすることがわかったのです。
イネでも同様の実験が行われましたが、シロイヌナズナのような応答は起きませんでした。ムギ類でも実験を行ったところ、こちらは、シロイヌナズナと同様の結果が得られました。両者の違いは、成長する季節です。ムギ類は秋に芽生えて冬から春にかけて成長します。研究結果は、冬越しする植物が温度や光量変動を感知して、適切に姿を変える能力に優れていることを明らかにしました。
気候変動に対応する作物の開発へ
そのほかには、夏の強雑草を対象にした実験が行われています。植物の成長に影響が大きいのは二酸化炭素の量です。強雑草には二酸化炭素を濃縮する能力があるとわかっていましたが、光量変動に巧みに応答する能力を発達させることで驚異的に成長することが判明しました。
これらの研究成果は、気候変動に対応して生育できる作物の開発などに役立つと期待されています。
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龍谷大学 農学部 生命科学科 教授 古本 強 先生
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