「スポーツと社会との関わり」を社会学の観点から考える

「スポーツと社会との関わり」を社会学の観点から考える

接点はどこにある?

社会学とは、社会現象に関わるメカニズムを統計やデータを用いて解き明かす学問分野です。その範囲は広範にわたりますが、スポーツと社会との関係性についても社会学の観点から研究が進められています。その入り口とも言えるのが、「人はいかにしてスポーツと接点を持つのか」を明らかにすることです。

人とのつながりから競技に触れる

最も多いのはスポーツ少年団あるいは部活動だと言われていますが、始めるきっかけとしては「周りの人からの影響」の比重が非常に高いことがデータとして証明されています。「親がそのスポーツをやっていた」「仲の良い友達が通っている」といった「つながり」からのスタートが多くの割合を占め、それはスポーツ環境などの外的要因をしのぐことも研究を進める中でわかってきました。
例えばヨットの場合、ヨットハーバーなどの施設がなければ練習ができません。しかし、競技者は地元だけでなく、ヨットに何かしらの「つながり」を持つ近隣の市町村、あるいは内陸部から通う場合も多い傾向にあることが確認されています。このことからも拠点ありきではなく、「つながり」がより優先的にスポーツと人とを結びつけていると言えます。

ビッグイベントを契機に

もう一つ、スポーツと人を結びつける接点として大きな役割を果たすのが、いわゆる大規模な大会の開催です。世界的なもので言えばオリンピックやワールドカップ、国内では国民スポーツ(体育)大会やインターハイなどが挙げられます。国内では、開催地になった市町村では専用施設が建てられることに伴い少年団が設立された事例も多くあります。大会の認知度が高ければ高いほど、さまざまなメディアを通しての情報発信も盛んになるため、スポーツに触れる人が増えるといった研究データも報告されています。「ホッケーの町」「サッカーの町」など、地域にスポーツが根付いている例は全国的に見られますが、そこにはこのようなメカニズムがそれを生み出す原動力となっているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

龍谷大学 社会学部 総合社会学科 健康・スポーツ社会領域 ※2025年4月新設 教授 久保 和之 先生

龍谷大学 社会学部 総合社会学科 健康・スポーツ社会領域 ※2025年4月新設 教授 久保 和之 先生

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メッセージ

スポーツ分野をめざすなら、社会でどのようなことが起こっているのかについても目を向けてほしいです。スポーツは、単独で存在して動いているわけではありません。例えば今は円安で、スポーツ用具などの金額も高くなっています。グローバルな考え方も必要になりますし、社会的な視点を持つことも非常に重要です。こういう視点を持つことで、「スポーツ」が持つ別の一面を見ることができます。また一方で、知識ばかりに偏るのではなく、実践、スキルなど現場での体験も大切にしてほしいです。

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あらゆる「壁」や「違い」を乗り越えるために、「まごころ」を持ち、「人間・社会・自然」について深く考える人を育む。それが、龍谷大学の教育のあり方です。自分自身を省み、人の痛みに感応して、他者を受け容れ理解する力を持つ。人類が直面するリアルな課題と真摯に向き合う。そして様々な学びを通じて本質を見極める目を養い、自らの可能性を広げていきます。