経済学の視点で「健康」と「医療」について考えてみよう
「健康」と「医療」だけではわからない
人間が生きていく上で、「健康」と「医療」は欠かせない要素です。しかし、これらの2つの要素は、意識されていなくても社会や経済の影響を非常に大きく受けており、経済学の視点を持ち込んで考えていく必要があります。こうしたアプローチの学問分野は、「Health Economics(健康経済学、医療経済学)」と呼ばれています。
病気にかかったその後は
ある人が病気にかかったとき、毎日規則正しく薬を服用すると症状は改善されることが科学的には分かっているとします。しかし、まずは症状があまり重くないと、人間は病院に行くのを先延ばしにしがちです。受診を促すパンフレットやポスターの文言が心に響かなかったために、病院に行く気にならないという場合もあり得ます。ようやく病院に行って診断を受けても、面倒に感じて薬を指示通りに服用しなくなるかもしれません。また、その人が経済的に困窮していると、そもそも病院や薬局に行けない可能性もあります。
このように人間の行動心理や癖、経済状態など、さまざまな視点から考えていくことで、それまでに明らかになっていなかった課題や改善策が見えてくる場合があるのです。
経済データの分析から得られる発見
健康経済学の研究では、何万人もの人を対象にした大規模なアンケート調査や医療機関受診データの中から、統計学やデータマイニングの手法を用いて、健康に関する課題を解決するためのヒントを探索していきます。すると、天気予報への態度やペットの有無など一見健康には関係なさそうな事柄から、食生活・家の広さ・収入など間接的には関係していそうな事柄までのうち、何が健康や不健康につながるかについて、思いがけない発見が得られる可能性があります。さらに、人間心理には経済学・心理学が見つけた不思議なパターンがあり、小さなメッセージの違いだけで、大きく人々の健康行動が変わることすらあります。そうした発見の積み重ねは、私たちの健康と社会のあり方を、よりよい形に導いてくれるはずです。
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