福祉としてのスポーツのカタチ ―柔道療育とは―

柔道を療育とすることの幅広いメリット
発達障害や知的障害のある小学生を中心として、スポーツを用いた療育が行われています。例えば、柔道を主体とした療育では、小学生同士ではなく、小学生と指導者が組んで柔道を行い、後者が巧みに「投げられる」ように導きます。すると小学生は、成功感や自己有能感、自己効力感が得られやすいとの傾向が見られます。競技として「強くなる」のは難しいかもしれませんが、柔道はそれだけのものではありません。礼節や正しい生活習慣、他者との関係性のつくり方、社会に適応する力などを磨くことができ、むしろそちらに重きが置かれているのです。
療育が行われる環境の重要性
柔道場はクッションの効いた畳が敷かれ、不要なものは置いていないのが基本です。そのため、転んでも痛くない、裸足で駆け回ることができる、障害物による二次的なけがが発生しない、寝転んだりもできるなど、多くのメリットがあります。この環境を利用して継続的な療育を実践していくことにより、社会適応は強く促されるとの結果も出ています。発達障害、あるいは知的障害は脳の障害なので完治することは難しいと言われますが、少なくとも彼らの「生きやすさ」は育成されると言えます。
海外の事例
柔道療育は、実はオランダやフランスで活発に行われています。両国ともに柔道人口が多く、放課後に柔道クラブに通ってから帰宅するという子どもたちは多いのです。そこで日本の指導者と議論を重ね、海外事例をうまく日本版に落とし込んでいくことが、前述の研究の目標となっています。
今後は全国の柔道クラブと連携を取り、どの程度の割合で障害児が参加しているか、柔道というスポーツがどのような特性の障害児に適応性があるかが明らかにされようとしています。その上で、柔道療育が正しく認知されて、療育の一つの方法として体系化され、選択されていくものになっていくと考えられます。
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鹿屋体育大学体育学部 スポーツ・武道実践科学系 講師小崎 亮輔 先生
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