遊びを通して創造性を獲得するこれからの保育
子どもが初めて出会う環境と遊び
乳幼児は生まれた瞬間から、周囲の環境に関心をもち、自らの身体や5感を通じて探求する能動性をもちます。そのため、子どもの自発的な探求活動である「遊び」は重要です。子どもたちにとって最初の遊びは、雨音や、揺れ動く影や光など周囲の環境の変化に関心をもつことから始まります。水に自由に触れたり変化を楽しむ時間や空間において、子どもは水の感触、物質的特性、変化などを感覚的に把握するとともに、自分なりの理論や仮説を構築します。こうした5感を通じての世界との接触を通じて、子どもたちは自分と世界を創造的に結びつける方法を学びます。
想像的な遊びにおける創造的問題解決
言語を獲得した幼児は、直接環境に対して働きかけるだけでなく、ごっこ遊びなどのイメージを介した想像的な遊びにも関心を向け始めます。遊びによって創り出された世界は虚構ですが、そこで子どもが抱く感情は現実的でリアルに感じられるものです。そのため幼児は、想像的な遊びのなかで様々な複雑な感情に直面し、それを乗り越えようと努力します。例えば、「悪い魔法使いの部下」という配役がなされた場合、幼児は「心情として悪いことはしたくないが役割上指示に従わなければならない」という状況におかれ葛藤します。このようなとき、幼児は「ふてくされつつも嫌々従う」などといった表現を演技に組み込んで、内面の葛藤を表現しつつ心情的に納得できる状況を創り出すのです。これは個人の情動と演劇の制約がぶつかった結果、創造的なアイデアが生まれた例です。
創造的思考を育む保育
変化の目まぐるしい現代社会において、創造性の発達は重要な要素ですが、保育の世界では秩序の維持のために「集団行動や規律を教えて、よい子をつくる」という方向にどうしても偏りがちです。これからの保育者には、自らが無意識に内面化している規範に目を向け問い直す姿勢や、子どもと共に世界と出会い、驚き、感動することができる感性が求められるでしょう。
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