漁業の町糸満のユニークな社会

漁業の町糸満のユニークな社会

糸満の女性

沖縄本島の南西部に位置する糸満は、琉球王朝の時代から漁業が盛んでした。そのことが、糸満の社会と文化に深く影響を与えました。
かつての糸満では、男性の多くが漁師になる一方で、女性は男性が獲った魚を売る役割を担っていました。戦前は、魚を入れた籠を頭に載せて、那覇など遠くまで歩いて売りに行ったと言います。魚を売りさばくには、物おじせずに買い手と相対する姿勢が大切です。そのため、糸満では誰とでも話ができる社交的な女性が高く評価されてきました。そして、生涯を通して魚売りに携わることで、女性は経済的にも自立したのです。こうした背景から、女性が強い社会が築かれていきました。

民俗知識で彩られた魚

糸満の女性たちは、行商の他にも鮮魚店や市場などで魚を売ってきました。年配になるとたくさんの魚は売れないので、「1日にマグロ1匹」など目安を決め、セリで競り落とし、売ります。彼女たちは魚を売る時、さまざまな知識を駆使した語りをします。その魚に脂がのる時期や、薬効、獲った漁法、料理方法など買い手に語るのです。例えば、シルイユ(タイの仲間)を売る時、買い手の家族の病状が話題になったことがあります。シルイユには熱さましの薬効があるとされているからです。糸満の女性たちが売る魚は、スーパーマーケットの魚とは異なり、語りによって価値づけられた、「民俗知識で彩られた魚」なのです。

文化人類学とフィールドワーク

文化人類学は、異文化を「内側から」理解しようとする学問です。長期間のフィールドワークによって相手社会に入り込み、その文化や風習を学びます。そうすることでその社会の物の見方を獲得しようとするのです。異なる文化の論理を知ることは、世界の見え方を変えます。そして、自文化の「あたりまえ」が、異文化の視点ではあたりまえでないことに気づきます。つまり、異文化を知ることは、自文化を客観視することにもつながるのです。

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神戸学院大学 人文学部 人文学科 准教授 三田 牧 先生

神戸学院大学 人文学部 人文学科 准教授 三田 牧 先生

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文化人類学、民俗学

メッセージ

学びとは、教科書を読んで暗記することではありません。好奇心を持って、いろいろな出会いに感動したり驚いたりして、それについてもっと知りたくて、追いかけ、つかみとるのが本来の学びです。自分が何をしたいのかわからなくても、大学に来てから見つければいいのです。もし、高校生の時点で、「自分が何者か」がわかっているつもりなら、それは自分の可能性を知らないだけかもしれません。大学に入ったら、たくさんチャレンジして、たくさん失敗して、自分の可能性を追求してください。

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