電気の節約、わかっていてもなかなかできない社会的ジレンマ

電気の節約、わかっていてもなかなかできない社会的ジレンマ

ある調査の意外な結果とは

ホテルからチェックアウトするときや長時間の外出をするとき、約7割の人がエアコンをつけっぱなしでした。また約4割が部屋の電気をつけっぱなし、約1割の人がテレビをつけっぱなしのまま部屋を後にしていました。また、洗濯によるエネルギー消費を抑えるために、シーツやタオルを毎日取り替えず、連続して使うことに協力した人は全体の3割弱でした。
これは1997年、COP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたときに、ある研究者がCOP3参加者の宿泊するホテルで行った調査結果です。翌年、同じ調査が一般観光客を対象に行われましたが、同様の結果でした。環境問題について話し合う国際会議の参加者といえば、さぞかし環境に対する意識が高いように考えられますが、一般観光客と変わらないという何とも皮肉な結果になったのです。

面倒くさいけどいいことを誰もやらなかったら?

全員が協力した方がよい結果になることがわかっているのに、一人ひとりが都合のよい行動をとることで、かえって全員にとって望ましくない結果になってしまうことがあります。
例えば、テレビの電源をリモコンでオフにするよりコンセントを抜いた方が消費電力を抑えられる、とわかっていてもやらない、しかしみんなが電気を節約せずに無駄使いをすれば二酸化炭素が増えて環境が破壊される、エネルギーも足りなくなる、そうすると電気代が値上がりして、結局は自分もほかの人もみんな困ったことになってしまいます。このような状況を、「社会的ジレンマ」と言います。

心理学で環境問題を考える

人間は手間や費用がかかることは、こうすればいいいとわかっていても、なかなか行動に移せないものです。心理学の観点から環境問題を考えるときは、行動と結果に加えて、手間や費用、ほかの人も同じようにしているという同調の気持ちなど、心理的にマイナスにはたらく要因を見ていかなくてはなりません。それらを探ることで、問題解決の糸口が見つかることもあるのです。

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大阪大学 人間科学部 行動学科目 環境行動学分野 准教授 青野 正二 先生

大阪大学 人間科学部 行動学科目 環境行動学分野 准教授 青野 正二 先生

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環境心理学、心理学、行動学

メッセージ

私が大学生のときを振り返ると、自分の専門科目に関係のない講義は役に立たない、つまらないと思って受けていたことがありました。しかし、どの講義にも一つ二つ印象に残っている話があります。今、自分が担当する講義の準備をするとき、たくさんの資料を調べますが、ふと気が付くと当時の講義で聴いた話が役に立っています。大学は垣根を越えて、複数の学問領域がオーバーラップするところです。いろいろな学問が背景でつながりあっているので、敬遠せずに学びましょう。後で役に立つことがきっとあるはずですよ。

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自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。