より良い会社をつくるには? 企業と社員をつなぐ「見えない約束」

「働き方」の仕組みを整えても不十分?
最近、企業では働き方がどんどん変わっています。たとえば、転勤を廃止したり、ジョブ型(職務内容に応じた)雇用を導入したりして、社員がより柔軟に働けるように工夫しています。
その背景には、コロナ禍でリモートワークや副業が増えたこと、少子高齢化や転職市場の活性化による人手不足などがあります。しかし、どんなに良い「働き方」の仕組みを作っても、社員が「納得して受け入れる」気持ちにならなければ、うまく機能しません。
「心理的契約」とは?
そこで注目されているのが「心理的契約」という考え方です。これは、社員が心の中で「これだけ努力すれば、これくらいの給料や昇進があるはず」と考えるように、企業と社員の間にある「見えない約束」を指します。もともとはカウンセラーと患者の間にある「お互いが心の中で結んでいる約束」を示した考え方が出発点となり、1960年代からは組織の研究にも応用されてきました。
近年では、企業が変化したときに社員が「約束を破られた」と感じると、モチベーションや行動にどのような影響があるのかを探る研究が増えています。企業にとって最適な人材マネジメントを探求する「人的資源管理」の分野でも、この心理的契約という考え方が重視されています。
「見えない約束」が企業を成長させる
では、企業が人事制度を変更するとき、心理的契約という考え方をどのように役立てればよいのでしょうか?
研究によると、まずは「なぜ変化が必要なのか」を企業が社員に丁寧に説明し、公平性や信頼関係を保つことが重要だとわかっています。そして丁寧な説明は、お互いの結びつきを強めることもわかっています。
このように「見えない約束(心理的契約)」を大切にしながら人事制度を整えることは、企業にとっても大きなメリットがあります。社員がやる気を失わずに働けると、結果として企業の成長にもつながるからです。心理的契約を大切にすることは、企業と社員の双方がより良い関係を築くための鍵と言えるでしょう。
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大阪大谷大学人間社会学部 人間社会学科 教授藤原 崇 先生
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