自動運転車の実現に向けた課題とは?

自動運転車の実現に向けた課題とは?

自動運転車と社会的な責任

この10年で、自動車は身のまわりで最も代表的な「ロボットとして動く耐久消費財」になりました。自動運転の技術はそこに運転操作を加えたもので、世界は完全運転自動化の「レベル5」をめざして進んでいます。完全な制御は、「走る凶器」と長年言われてきた自動車の、安全性への懸念と表裏一体です。自動運転車はインターネットとつながって、走りながら周囲の状況を「見て、感じて、考えて、動かす」というものです。その進化につれて自動車メーカーの責任も増していく中で、メーカーはセンサによる「検知もれ」や「誤認知」への対処技術に力を入れています。

いかに正しい認識・動きをさせるか

「検知もれ」や「誤検知」とは、いわば「こちらが一生懸命話しているのに聞かない人」です。自動車は自動運転でなくても道路上の標識を読み取っていますが、ビジュアルが似た店舗の看板などを誤認することもあります。一方、情報理論では、アルゴリズムを高度化して検知もれ回避精度を上げると、逆に誤検知率が上がってしまうというジレンマもあります。そこで、自動運転車では人の動きを検知するAIの学習機能を逆手に取り、学習しにくくなるように気を散らすデータを仕込む「データ毒化」といった対処も行われるほどです。

セキュリティ問題

また、自動車のシステムがネットワークにつながっていると、サイバー攻撃の対象にもなります。ハッカー達が腕試しにハッキングしていた時代は過去となり、今ではサイバー攻撃が一大ビジネスとなりました。もし自動車が乗っ取られると、テロや戦争の道具に使われることや、物資の輸送が一斉停止することもあり得ます。セキュリティ対策の研究には、AIなどの先端技術だけでなく、時代の流れや技術の歴史も踏まえた情報リテラシーが欠かせません。
自動車は、物理法則に従う「剛体」でもあります。「ニュートンの法則」のように、原理原則を大事にした、情報や電気系との学際的な研究が必要なのです。

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先生情報 / 大学情報

電気通信大学 情報理工学域 II類(融合系) 計測・制御システムプログラム 准教授 澤田 賢治 先生

電気通信大学 情報理工学域 II類(融合系) 計測・制御システムプログラム 准教授 澤田 賢治 先生

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制御工学、最適化理論、セキュリティ論

先生が目指すSDGs

メッセージ

理数系を志望していても、社会や歴史の分野を軽んじてよいという時代ではありません。将来、何がどう役立つかはわからないので、機会を見つけて人文系の分野も学んでおくべきです。特に生成AIの分野では、プログラミングなどの技術をカバーしてもらえるので、情報系は理系だけの分野とは言えなくなります。そして、何か知りたいこと、疑問などがあったら、あなた自身で動き、人に会うことで解決するという経験をぜひしてほしいです。その中で本当にやりたいことを見つけるあなたを応援します。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

電気通信大学に関心を持ったあなたは

電気通信大学は、東京にある理工系国立大学で、「工学」と「理学」のうち、特に情報分野および理工分野を核とした教育研究を行っています。先端科学技術を支える全分野、例えば、情報、通信、電子、知能機械、ロボティクス、光科学、物理、量子、化学、物質、生命などの分野を網羅しています。社会で活躍する人材の育成をめざし、ものづくりに意欲を燃やす学生の期待に応える教育環境を提供します。