コミュニケーションを社会(心理)学する

人と人との関係の成り立ち
日常生活において私たちは、たまたま同じ電車に乗り合わせた人に対しては「知らない人」として振る舞います。自分の家族や友人に対する接し方とは、内容も深さも異なります。これを社会学の視点で考えると、相手によってコミュニケーションの取り方を変えることで、コミュニティや社会が成り立っていると言えます。さらにアメリカ発の社会学・社会心理学の理論「シンボリック相互行為論」では、「人と人との関係は、言葉や身ぶりといったシンボル(象徴)を通して成り立つ」と考えられています。
「頭でわかる」と「心で感じる」
シンボリック相互行為論を踏まえて、コミュニティでの人々の振る舞いを観察した研究があります。1998年に仙台市で設立された「パラムせんだい」は、住民たちが在日朝鮮人に関する対話を行う市民団体です。対話の中で、日本人のCさんは、在日朝鮮人のAさんの背景にある歴史や境遇からくる「寂しい」感情を伴う意見を、真に理解し共感することは困難だと気づきました。しかし対話では、参加者たちが頭で理解することはできなくても、相手の存在や違いを尊重して「心で感じようとする(承認する)姿勢」も確認されたのです。
共生のためのヒント
人の行為がお互いに作用することで成り立つ社会の中で、欧米では個人の権利が尊重されるのに対して、日本では個人やマイノリティよりも、全体の和を重んじる傾向が見られます。日本では、異なる意見のぶつかり合いを避けて、同調することが重視されているのです。しかし近年の日本では、労働力不足を補うための外国人労働者やその家族を広く受け入れており、異なる文化や歴史背景を持つ人たちとの共生も待ったなしの課題になっています。こうした現状に対応するためにも、社会学や社会心理学の知見がヒントになります。日常的に対話ができる環境づくりだけでなく、違いを積極的に認め合うマインドセットや、それを促すための環境整備が、よりよい日本の社会づくりにつながっていくのです。
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先生情報 / 大学情報

福山市立大学都市経営学部 都市経営学科 准教授山口 健一 先生
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シンボリック相互行為論、共生社会論先生が目指すSDGs
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