トイレの「流す」ボタンと「呼出」ボタンの押し間違いを防ぐには?

トイレの「流す」ボタンと「呼出」ボタンの押し間違いを防ぐには?

デザインは誰にでも必要なリテラシー

チラシやポスターを作るとき、作り手の意図を伝えるのは難しいと感じたことはありませんか? では、どこをどう直せばもっと伝わるのでしょうか?
カッコイイやカワイイだけでなく、メッセージやイメージを正しく伝えることもデザインの役割です。色や形、文字を使ったグラフィックデザインの基礎を覗いてみましょう。

ボタンを押し間違えてしまうのはなぜ?

多目的トイレには「流す」ボタンと緊急時用の「呼出」ボタンがありますが、ある学校では利用者が間違えて呼出ボタンを押す事例が多発していました。なぜボタンの意味が正しく伝わらないのでしょうか? このトイレでは、呼出ボタンが白地に緑の文字、流すボタンが黄色地に黒の文字で書かれていました。日本の道路標識では、白と緑は「安全」、黒と黄色は「注意」を意味します。利用者は無意識に呼出ボタンを安全と感じ、流すボタンと間違えて押していた可能性があります。

デザインで問題を解決する方法

配色のイメージと言葉の意味にギャップがあるだけでも情報が伝わりにくくなります。一方で、こうしたデザインに関するリテラシーがあると、どこをどう直したら良くなるのか、きちんと言葉にすることができるでしょう。
私たちは、道路標識の赤と白は「警告・禁止」、青と白は「指示」の意味があること学習して知っています。そこで、呼出ボタンの色を「赤+白」に、流すボタンの色を「青+白」にデザインし直したところ、その学校でのボタンの押し間違いは0件になりました。
このように、観察して集めた情報を整理し問題解決につなげる考え方をデザイン思考といいます。「なぁんだ、そんなことか」と思ったかもしれませんが、見やすいスライドを作ったり、分かりやすいゲームのUIをデザインするときにも、多くの人に正しく情報を伝えられるデザインを考えることは、オシャレさやカッコ良さと同じくらい大切なことなのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

大阪電気通信大学 総合情報学部 ゲーム&メディア学科 准教授 倉地 宏幸 先生

大阪電気通信大学 総合情報学部 ゲーム&メディア学科 准教授 倉地 宏幸 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

デザイン学、グラフィックデザイン

先生が目指すSDGs

メッセージ

色・形・文字・レイアウトといったデザインの基本要素を、体験を通じて学んでみましょう。たとえば、実際に手で物に触れることで、その質感や形がユーザーに与える印象を体感的に理解できるでしょう。「手が汚れた」などの予期せぬ体験から、新しいアイデアが生まれるかもしれません。さらに、現場で色の組み合わせやレイアウトの効果が、人々にどのような影響を与えているかを観察することで、デザインプロセスに実践的な視点を加えることができます。この大学で、頭と体を使って、人に伝わるデザインを学んでみませんか。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大阪電気通信大学に関心を持ったあなたは

本学は工学を中心に建築、情報、医療技術、リハビリ、スポーツ、ゲーム、デザインなどの学科/専攻を設置している「技術系総合大学」です。在籍学生数は大学院を含めて約5,887人(2023年5月1日現在)。高度なモノづくりができる「実践型教育」理念のもと、社会で実際に役立つ技術と知識修得をめざします。「3D造形先端加工センター」などの最先端設備や「資格学習支援センター」によるサポート体制が就職率の良さに繋がっています。また、2つのキャンパスは京都や兵庫近辺からのアクセスの良さも魅力の一つです。