公園を通して考える「常識、歴史、文化」

公園のイメージ
普段私たちが何気なく立ち寄る公園には、実はさまざまな側面があります。例えば近年、商業施設やマンションなどで「○○パーク」と名付けられた施設が増えています。多くの理由が考えられますが、あまりにも効率性や正しさが求められる今の社会の息苦しさから解放される「自由な」イメージを、公園に重ねているからかもしれません。また、日本の国土の東西南北の端は、いずれも公園になっています。こうした象徴的な場所には、すぐに建て替えられたり、姿を変えたりする施設よりも、「いつまでも変わらない」イメージのある公園こそがふさわしいと考えられているのでしょう。
子どもだけの場所ではない
日本では主に子どもの場所というイメージのある公園ですが、中国の公園を訪れてみると高齢者の利用の方が圧倒的に多く、ダンスや体操、太極拳に励む姿や、友人同士でトランプをする姿が見受けられます。中国では日本に比べて健康保険制度が整っていないため、自分の身体は自分で守ると考えている人が多いことや、退職年齢が女性では55歳程度と早いこと、また不動産価格が高騰して、家に十分な居場所がない高齢者が集まる場所として公園が選ばれていることなどが、その要因であると考えられます。
公共空間について考える
また公園には、花火やボール遊びの禁止をはじめとしたさまざまな「禁止ルール」が設定されています。それは公園がさまざまな行為を「排除」することで成り立っているからです。逆にそれらの行為が公園から排除されている理由を考えることで、私たちが守ろうとしているものを読み取ることもできるでしょう。
社会学は「常識を疑う学問」といわれます。公園を含め、墓地やため池といった公共空間は不特定多数の人が関わり、さまざまな思いや利害関係が交錯する場所でもあります。こうした空間に足を運び、観察し、そこにいる人たちの話に耳を傾けることで、その場所にどのような歴史が蓄積されて、そこからどのような文化、そして常識がつくられていくのかをとらえることができるのです。
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大正大学人間学部 人間科学科 教授荒川 康 先生
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