病院の中で患者からの相談を担う、医療ソーシャルワーカーの役割

病院の中で患者からの相談を担う、医療ソーシャルワーカーの役割

病院の中の福祉専門職

医療ソーシャルワーカーは病院の中で働く「福祉専門職」です。その役割を、がんと診断された患者を例に考えてみましょう。40代の女性が乳がんと診断された場合、治療のことだけでなく、小さな子どもの世話や仕事の調整、経済的な問題など、さまざまな心配が生じます。こうした問題は、医師や看護師だけでは対応できないため、医療ソーシャルワーカーが専門的に支援します。患者が抱える不安や悩みに寄り添い、必要な制度やサービスにつなげていくのです。

退院支援と社会的入院

治療が終わっても退院できない「社会的入院」という社会的課題も存在します。例えば、高齢者が入院すると、数日で筋力が低下してしまい、治療が終わっても自力で生活することが難しくなり、退院できなくなる場合があります。医療ソーシャルワーカーは、こうした人々が安心して生活できるように、介護保険の利用や福祉サービスの調整を行います。この「退院支援」は、医療と福祉をつなぐ重要な役割です。患者一人一人の状況に合わせて、必要なサービスを利用できるようにするのが医療ソーシャルワーカーの専門性です。在宅生活を支える地域のサービスと医療を橋渡しすることで、患者の希望に沿った生き方を実現させるのです。

心理と社会の両面からの支援

医療ソーシャルワークの独自性は、心理面だけでなく社会環境も含めた包括的支援にあります。ソーシャルワーカーは患者の心理や内的側面を通して、その人を取り巻く社会環境も含めた支援を行います。心の支えと同時に、経済的・社会的な基盤も整えることで、その人が本来の力を発揮して、より充実した生活を送ることができるようにサポートします。
医療ソーシャルワーカーの研究では、相手を尊重し、その人の強みや可能性を見いだすことのできる人材の育成が重要なテーマです。AIが発達しても、「人と社会との関係」を見極めて、一人一人に沿った支援を考える専門性は、今後も人間にしかできない重要な役割なのです。

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先生情報 / 大学情報

名寄市立大学 保健福祉学部 社会福祉学科 准教授 榊原 次郎 先生

名寄市立大学保健福祉学部 社会福祉学科 准教授榊原 次郎 先生

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医療ソーシャルワーク論、社会福祉学

先生が目指すSDGs

メッセージ

病気になった時、私たちは体の治療だけでなく、「仕事はどうなるのか」「家族のケアは」「経済的な問題は」などといった、生活全般にわたるさまざまな悩みを抱えます。これらを解決するのも医療ソーシャルワーカーの役割です。人は一人では生きていけません。困った時に手を差し伸べ合うことが福祉の本質です。あなたが誰かの支えになりたいと思ったら、社会福祉学を学んでみてください。まだ自分の道が決まっていなくても大丈夫です。人と関わることに興味があれば、広い選択肢から自分の道を見つけられます。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

名寄市立大学に関心を持ったあなたは

「ケアの未来をひらき、小さくてもきらりと光る大学をめざす」名寄市立大学では、保健医療福祉の連携と協働、少人数教育の実践、地域社会の教育的活用と地域貢献に、基づく教育・研究を進め、教養教育の充実を図りながら社会に貢献できる職業人の育成に努めています。
人口減少、少子高齢化が進む中、地域の活性化に少しでも貢献できるよう、本学の総合的専門職養成大学の特徴を生かした保健・医療・福祉・保育(子育て)・食育の観点から産学官の連携を図り、課題解決に向け取り組んでいます。