数学と相対性理論を使えば書ける宇宙地図
アインシュタインと幾何学
数学は、さまざまな分野で役立てられています。アインシュタインの「相対性理論」で使われたのも数学の「言葉」でした。時間と空間を分けずに、四次元空間としてとらえたほうが理屈に合うと考えたのが、相対性理論です。
アインシュタインはもう一つ、重力の正体は何かを理解しようとして「物が落ちるのは何かに引かれるからではなく、空間が曲がっているからだ」と考えました。空間が曲がっているから「重力に見える」というのです。曲がった空間を記述するための言葉を探してみると、もともと数学にその言葉がありました。そのもととなったのが、ガウスという人が発見した「曲率」の概念です。図形の曲がり方を表す「曲率」は、幾何学で使われる大切な概念の一つです。幾何学では、この曲率を使って図形を研究します。
アインシュタインの研究とは全く独立に、数学者のリーマンが作っていた言葉で相対性理論を説明できました。アインシュタインは「リーマンだけが前世紀中ごろ、すでに新しい空間概念を生み出していた」と称えています。
測量できない場所を測る
幾何学を意味する「geometry」には「大地を測る」という意味があります。幾何学はもともと昔の人たちが、実際に現地に行って測量できない場所の正確な地図を作るために生み出し、そこから発展してきた学問です。現代のように世界旅行が容易でなかった昔から、人間は地図を描いてきました。ここから「ピタゴラスの定理」など、さまざまな言葉が生まれました。ガウスの曲率も、天体を使わずに地表面の測量だけで地球の形を決定しようと、発見されたものです。
今、宇宙の形を知りたいと思っても、私たちが実際に「宇宙の果て」や「宇宙の始まり」に行くことはできません。行って測れない場所のことを知るには、実験の代わりに知恵を使うしかありません。その知恵が数学の言葉です。数学の力で、宇宙の果てや始まりを知ることができるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。