身体の動きで言葉を司る脳の部位も活性化する
運動と脳の活動の関係
あなたは、カポエイラを知っていますか。カポエイラは、ブラジルに起源がある格闘技のような舞踊(ダンス)です。もちろん、クラシックバレエとは動きが異なっています。
さて、カポエイラを踊ることができる人、クラシックバレエの経験者それぞれに対して、両方の動きを見せながら、脳活動がどのように変化するかについて調べてみた研究があります。
クラシックバレエの人は、クラシックバレエの動きを見ているときにしか、ある部位の脳血流量が上がりませんでした。カポエイラの人も同様に、カポエイラの動きを見ているときにしか血流量が上がりませんでした。逆では血流量の変化が見られなかったのです。ある部位というのは、運動前野や頭頂連合野の楔前部(けつぜんぶ)です。運動の制御や、自分自身の身体の地図などに関わっていると考えられているところです。
ダンスでも活動する運動性言語中枢
また、脳の中には、運動性の言語野があります。脳梗塞などでこの部位の機能が損なわれると、言葉がうまく話せなくなる部位として知られています。前頭葉にあって、ブローカの運動性言語中枢と呼ばれています。
舞踊、特にクラシックバレエなどでは、さまざまな所作がありますが、それには歴史的な積み重ねが存在し 踊り手の意図を身振りやジェスチャーなどで伝えることができます。そして、踊り手は、しゃべっていない場合でも、踊っているときに運動性言語中枢が活動していることが明らかになっています。つまり、相手に伝えたい情報があると、言葉を発していなくても、脳内の言語を司る中枢が活性化しているのです。このように運動と非言語性のコミュニケーションとは深い関係があることが示唆されます。このことは、スポーツの場面で眼と眼で意思の疎通を図ったり、サインプレーなどにも共通しています。
脳機能イメージング技術の発達や、ほかの研究分野の発展もあって、運動と、それに関連する脳活動を観察することで、今までわかっていなかったことが詳しくわかるようになりました。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。