薬を作るメカニズム
なぜ薬は効くの?
薬は、古くは植物や動物、鉱石などの天然物から、病気やケガに効くものを試行錯誤を重ねた結果発見し、使われるようになってきていました。しかし、最近では、生物学と化学の進歩により、もっと効率よく薬を生み出すことができるようになりました。どういう働きがあれば人体にとって有効なものになるのかということがわかってきたからです。
一つは、受容体(レセプター)に関する薬です。体内にある受容体は、ある物質と結合すると新たなひとつの物質になり、いろいろな症状を引き起こします。例えば、エストロゲンという女性ホルモンは、増えすぎて受容体とくっつくと乳がんを起こす原因となることがわかりました。そこで、たんぱく質である受容体に、エストロゲンとよく似た、しかしがんを引き起こさないものを結合させて、ブロックします。このように阻害して人体を守る薬を「アンタゴニスト」と言います。また、同じく受容体への結合を利用する薬として、衰えた受容体に対して、本来結合するものよりも優れた働きをする成分を付けることもあります。これを「アゴニスト」と言います。また、天然の触媒であり、体内のいろいろなものを変換していく酵素に対しての薬も重要です。
そして、薬を作るうえで大切なのは副作用を起こさないようにすることです。必要な場所にだけ効き、効果を高めることができれば良い薬となるでしょう。
効率よく薬を作る
また、効果のある成分の化学構造を変え、最初の何千倍もの効果を発揮するという薬を作り出す「薬の最適化」も行われています。よく使われるたとえですが、体内の受容体や酵素を「鍵の穴」と考えます。薬やホルモンは「鍵」です。鍵の穴に、ぴったり合った鍵がはまれば鍵が開いて情報が伝わります。どんな鍵が合うのか模索しながら、薬を作るわけです。現在、結合したり離れたりしながら安定した形になる“化学平衡”を利用し、どんな形の鍵穴であってもフィットするユニークな創薬の手法も開発されており、今後も次々に新しい薬が生まれることに期待が集まります。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。