夏を涼しく、冬を暖かく過ごすために

夏を涼しく、冬を暖かく過ごすために

高気密、高断熱住宅の登場

伝統的な日本の住宅は気密性、断熱性ともに低いものでしたが、近年は北欧から高気密、高断熱という考え方が入ってきました。気密性とは、室内の気体が外に漏れない、もしくは室内に外気が流入しないということで、断熱性は熱の移動をどれだけ抑えることができるか、ということです。日本でもエネルギーを節約したいという要望があり、高気密にして断熱性を高め、夏、冬ともにエネルギー消費量を抑えましょうということになりました。断熱性や気密性が低いと、部屋の中の上下温度差が大きくなり、部屋の中に温度のムラができてしまいます。高断熱にすると、このムラが小さくなるので、部屋の中の環境も良くなります。もちろんエアコンの効きも良くなるので、暖房も冷房も低コストで使用できるのです。

日射の遮蔽(しゃへい)と通風で、涼しくなるか?

高気密、高断熱住宅は冷暖房の効率を上げ環境も良くなりますが、その一方で住宅の外と内を遮断することになり、外の気配や季節感を感じることができなくなってしまいます。最近の研究で、実は高気密、高断熱の住宅では夏でも日射の遮蔽をして、通風を室内にうまく取り入れることができれば、冷房なしでも心理的に快適な環境になることがわかりました。また、冬も日射をうまく取り入れる工夫をすることによって、多少気温が低くても快適に生活できることがわかってきました。日本には季節があり、地域ごとに気候の特徴があるので、その特徴をとらえて、設計することが重要です。

最良の環境でも20人に1人は不快

でも、人の温冷感には難しい問題もあります。暑いか寒いかに影響を及ぼす重要な要素として、気温のほかに、湿度、気流、放射、人の代謝や着衣がありますが、デンマーク工科大学のファンガー(P.0.Fanger)教授は、「最良の環境だとしても20人に1人は不快に感じている」という研究結果を発表しています。人それぞれ感じ方が違っているので、全員が満足できる環境というのはなかなかつくれないのです。

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先生情報 / 大学情報

名古屋市立大学 芸術工学部  准教授 原田 昌幸 先生

名古屋市立大学 芸術工学部 准教授 原田 昌幸 先生

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建築学、建築環境工学

メッセージ

芸術工学部の中では、建築デザインや都市デザインが一つのテーマになっています。一級建築士免許を取得するために、デザインだけではなく構造や環境といった、建築家になるための基礎能力を養うための授業も行っています。見た目は美しいけれど、生活しにくい建築物を造るわけにはいきません。その基礎となる環境工学や環境心理を担当しています。また、名古屋市立大学では1年生から実習に力を入れています。デッサン画から始まって、建築設計、都市計画実習もあり、従来の工学部の中では行ってこなかった内容も数多く含まれています。

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名古屋市立大学は、医学部・薬学部・経済学部・人文社会学部・芸術工学部・看護学部・総合生命理学部の7学部とそれぞれの研究科およびシステム自然科学研究科からなる総合大学です。
大学の最も重要な使命は、優れた教育を通して地域および国際社会で活躍する有為な人材を育てること、すなわち「人づくり」です。知識の詰め込みではなく、自ら課題を見つけ、その解決に正面から取り組む姿勢を養うため、本学では、学生と教員の触れ合いを大切にし、演習、実習を重視する少人数教育を行っています。