光を当てるとあら不思議、一瞬で果物の中の様子が丸わかりに

光を当てるとあら不思議、一瞬で果物の中の様子が丸わかりに

腐ったミカンが引き起こす深刻な問題

箱詰めで送られてきたミカンの中に、もし腐ったものが混ざっていたらどうなるでしょうか。ほかのミカンも腐っているんじゃないかと気になるでしょう。クレームの対象になるし、万が一、新聞やテレビなどで報道されたりしたら、そのミカンの産地ブランドに取り返しのつかない傷がつきます。
もちろん、ミカンは出荷前に、厳重にチェックされています。テレビカメラや非破壊検査装置まで使って、外観は言うまでもなく糖度や酸味など内部の品質までしっかり検査しているのです。ところが、こうした従来の検査では水腐れ状態になったミカンを見つけることができませんでした。
水腐れのミカンは、見たところ普通のミカンと何も変わりません。言われて注意して見れば、その色が若干黒ずんでいるのがやっとわかるぐらい。これをテレビカメラで判定するのは至難の業(わざ)です。とはいえ夏の暑いときはもちろん、冬でもちょっとした傷から細菌が入り込むと、簡単に水腐れになります。外観が普通に見えても、触ればぐにょっと崩れてしまう腐ったミカンは、農家にとって頭痛の種でした。

ミカンに紫外線を当てると見えてくるもの

何とかして腐ったミカンを選り分けることができないか。課題解決のカギとなったのが蛍光物質でした。ミカンの果皮にはわずかではあるけれども、必ず蛍光物質が含まれています。これを使えば腐ったミカンをチェックできます。そこで活躍するのが紫外線です。
水腐れ状態になると蛍光物質は果皮から溶け出していきます。果皮に包まれた状態では紫外線を当てても光らない蛍光物質も、水腐れ状態となり果皮から溶け出すと、紫外線が見つけてくれるのです。
しかし、肉眼でチェックするわけではありません。そもそも今出荷されるミカンは、一個ずつ何台ものカメラを使って外観から中身までをきめ細かく高速に検査しています。そこで、さらに紫外線を当てた画像も撮影することで、一瞬のうちに腐ったミカンをチェックする。そんな仕組みができているのです。

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京都大学 農学部 地域環境工学科 教授 近藤 直 先生

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農産加工学

メッセージ

私は俗に言う「三ちゃん農業」、第二種兼業農家の長男として育ち、幼い頃は家族が農作業で大変な思いをしている姿を目にしてきました。そこで子どもの頃に考えたのが、農作業のできるロボット開発です。現在では農業ロボットの開発に関われるようになり、まだまだ人力作業も多くありますが、ロボットと名の付いた農業機械も増えつつあります。農業の担い手が減りつつありながらも、安心・安全な「食」が強く求められる日本だからこそ、農業関連の科学技術は大きく期待されています。

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