「道路」は、しなやかに進化していく
変わる公共事業の評価
公共事業で幹線道路を造る場合、そのルート計画から完成までには長い時間を要します。公共事業ではまず、「プロジェクト評価」が行われます。公共事業は複雑な要素が絡み合っており、その効果をどう評価するのかが重要だからです。道路ができれば移動時間が短縮され、渋滞や交通事故が減り、燃費も改善されます。ほかに、防災面や地域への長期的な経済効果、環境への影響なども評価対象です。
公共事業には、公平な視点からの客観的評価が必要です。2000年代は公共事業に対する逆風の中で、事業の効果を目に見える貨幣換算で表しましたが、現在は必ずしも貨幣換算ができない要素も拾い上げます。
巨大災害から命を守った道路
日本は、人口減少と少子高齢化、企業の海外移転などの背景があり、2011年の東日本大震災までは、交通量が少ない田舎の道路造りは費用対効果が小さい、つまり優先順位が低いという考え方でした。ところが、震災後、ある道路が注目されます。岩手県の三陸沿岸にある釜石山田道路という、供用直前だった幹線道路です。費用対効果の評価は小さかったのですが、津波の被害をカバーする役割を果たしただけでなく、避難するための「命の道」として使われたことで、道路への評価の視点を問い直すきっかけとなったのです。
強靱でしなやかな道路を造る
これからの日本の道路造りには、防災という非日常の視点が欠かせません。また、非日常の要素といえば幹線道路の近くで開催されるイベントなども同様で、通行量の受け皿が小さいと渋滞し、実質的に道路が機能しなくなります。減災や縮災ができる、しなやかで強靱な道路を造っていくためには、しっかりした都市間ネットワークの構築が必要です。その社会的な合意形成を得るための、ていねいなプロジェクト説明も不可欠です。
そういう意味で地方の道路整備はまだ途上にありますが、近年ではこうしたプロジェクト評価での議論が、政策にもフィードバックされています。
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先生情報 / 大学情報
高知大学 理工学部 地球環境防災学科 講師 坂本 淳 先生
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土木計画学、都市防災計画学先生が目指すSDGs
先生への質問
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