他人のために無償で奉仕することで人類は繁栄してきた

他人のために無償で奉仕することで人類は繁栄してきた

ボランティアは特別なことではない

ボランティアは特別な行為と考えている人が多いかもしれません。確かに、何の見返りもなく他人に奉仕するわけですから、特別のことと考えるのは無理もありません。しかし、そのような行為は、人間の歴史を見ると普通に行われてきました。逆に、自分のことしか考えない社会では、人間は生き延びることはできなかったかもしれません。人が困窮して死にそうになっている時に、自分には関係ないという態度をとれば、個人に損害はなくても、長い目で見ると人口が減り種は滅びてしまいます。

「ボランティア」は人のためならず!

実際、他人のために何かをするという傾向にあった人間だけが、種として繁栄してきたのです。そのような人々は神話などという形で、他人に尽くすことのよさを子孫に伝えていきます。次第にこのような特性は、遺伝的に人間の中に組み込まれてきたと考えてもいいかもしれません。したがって、ボランティアは個人レベルでは無償の行為ですが、社会全体あるいは長い期間で見れば、見返りのある行為だといえます。そう意識していなくても、今他人を助ければ、いつかどこかで今度は他人が自分を、あるいは自分の子孫や属している集団を助けてくれると人間は考えているのです。

日本は村社会からの脱却が課題

このように考えるとボランティアはもっと称賛されてよい行為ですが、日本では海外に比べるとあまり評価されていません。これは、日本にはまだ「村社会」的な心性が残っているからだと考えられます。村の中では住民同士の連帯感が強く、深く結びついていますが、一方で、村の外に対してはあまり関心を示さず、関係も希薄だという傾向にあるのです。この心性は、地域社会、企業、学校などさまざまな社会に蔓延(まんえん)しており、この閉じた人間関係を開放していくことが大きな課題となっています。ボランティアの機運はその意味で、日本の閉じた社会を変える契機になるかもしれません。

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宮崎公立大学 人文学部 国際文化学科 メディア・コミュニケーション専攻 教授 川瀬 隆千 先生

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大学は学問を究める場です。学生は高校までの基礎的な勉強を踏まえて、専門の勉強をしていきます。大学で勉強すると、あなたが考えている当たり前のことが、ガラガラと音を立てて崩れていきます。そのような経験を通じて、中学や高校の時の自己とは違う自分を発見するでしょう。変わっていく自分を恐れてはいけません。もともと人間はまわりとの関係の中で柔軟に変化する特性を持っているからです。大学では、そういう自分が崩れていく経験を楽しむという心の余裕を持ってほしいと思います。

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