講義No.03415 教育 社会学

曲がり角にある教育学。その課題を考える

曲がり角にある教育学。その課題を考える

学校教育システムのルーツとは?

現在の学校教育のシステムは、フランス革命など近代市民革命を契機に成立した思想によって、基礎がつくられたものです。
近代以前には、今日の学校教育のように、すべての子どもたちを一つの場所に集めて、国が決めたカリキュラムを教えるシステムではありませんでした。職人の子どもの教育は、職人になるために工房に弟子入りすることでしたし、商人の子どもは商人になるための勉強が教育そのものでした。
近代市民革命は、こうした状況を変え、どんな職業の子どもも、市民(国民)として等しく教育を受ける権利があるとして、学校教育の理念とシステムの礎を築いたのです。

大きな曲がり角にある、学校教育システム

ところが、200年以上も前に基礎が築かれた学校教育システムは、20世紀末から21世紀初頭にかけての今日、大きな転換を迫られています。
例えば、教員養成システムでは、教師の資質として何が必要なのか、現在根本から問い直されています。また、学校の運営を、今までのように行政まかせでよいのか、もっと地域住民がかかわる必要があるのではないかという議論もあります。さらにカリキュラムの内容では、「ゆとり教育」と「詰め込み教育」の間を揺れ動くのではなく、根本的な改革が必要ではないか、などという問題です。

教育学に課されているあらたな課題

実は教育学とは、近代市民革命によって生まれた教育理念と教育システムを支える学問として成立し、発展してきたという経緯があります。すなわち、近代教育思想の成立過程や学校教育の正当性を研究し、教育システムの優位性を明らかにすることが、教育学の使命の一つだったのです。
ところが、学校教育の理念やシステムの転換が迫られているのが今日です。そのため、教育学自体も、大きな曲がり角にさしかかっていると言えます。
時代に合わなくなってきた学校教育の理念とシステムを、新しい方向に発展させるために、教育学が力を発揮することが求められていると言えるでしょう。

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東京大学 教育学部 基礎教育学コース 教授 小玉 重夫 先生

東京大学 教育学部 基礎教育学コース 教授 小玉 重夫 先生

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メッセージ

高校までの勉強では、「答えを出すこと」が求められると思いますが、大学では、「答えを出すこと」より、「何が問題になっているのかを見つけること」が求められます。ですから、高校時代から、「問題を見つけようとする姿勢」をもってください。そのためには、広く世の中で起きていること、教育問題はもちろんですが、経済問題や外交問題など、いわば「答えの出ない問題」に自分なりに取り組んでみることが大切です。そうした習慣を身につけることで、大学での学びがいっそう価値あるものになると思います。

先生への質問

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東京大学に関心を持ったあなたは

東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。