新しい教育のキーワードは「市民性」
さまざまな問題に直面している学校教育
今日、学校教育はさまざまな問題に直面しています。
そもそも、現在の学校教育のシステムは200年以上前の近代市民革命を契機にした近代教育思想にその基礎があります。時代とともに見直しが迫られるのは当然でもあり、20世紀末から21世紀初頭にかけての現代は、ちょうど曲がり角に達している時期と言えるでしょう。
従来の「公教育」ではとらえられない事態が……
それでは、200年前と今日とで、教育システムの何が違っているのでしょうか。その一つは「公教育」をめぐる考え方です。公教育とは、国や地方自治体が責任をもつ教育のことです。日本では公立私立を含めて、「学校教育=公教育」とされてきました。
ところが今日、公教育という概念ではとらえられない事態が、学校現場に広がっています。例えば、公教育ではない塾や予備校が広く受け入れられ、教育の現場で不可欠な存在になっています。公立の学校で、塾の先生による補習が行われることもあります。
さらに、国際化の進展によって、「公共性」が一国の範囲に留まる概念ではなくなっていることも、公教育の概念を揺るがせているのです。
キーワードは「市民性」
それでは、今後の学校教育(公教育)はどのような方向に向かうべきなのでしょうか? それを研究し提言していくことが、今日の教育学に課せられた大きな課題の一つと言えます。さまざまな点から研究されていますが、そのキーワードの一つが「市民性:シティズンシップ」です。
それは、国や国家という枠組みから教育を構築するのではなく、一人の「市民」として教育をとらえる観点です。この観点は少数派の国籍や民族、見た目などの違いによる「異質な他者」を排除しないという考え方につながります。こうしたキーワードから教育をとらえ直すことで、21世紀の新しい教育のあり方がみえてくると考えられるのです。
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東京大学 教育学部 基礎教育学コース 教授 小玉 重夫 先生
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