ディズニーと日本のアニメの比較から考える日米の文化
キャラクターが魅力を生み出したディズニーアニメ
ウォルト・ディズニー・カンパニーは、1920年代に創業して以来、その長い歴史の中で数多くのアニメーション作品を生み出してきました。特に、1928年の短編作品『蒸気船ウィリー』から登場したミッキーマウスや、その後の作品に登場するドナルドダック、グーフィー、プルートなどの魅力的なキャラクターは、ディズニーアニメの人気をより一層高める要因となりました。こうしたキャラクターという枠組による奥深い作品性の追究が、ディズニーアニメとほかの作品との決定的な違いを生み、大人も子どもも楽しめる娯楽としての「アニメ」がアメリカの大衆文化に定着する礎となったのです。
独特の特徴を持つようになった日本のアニメ
一方、アメリカで大衆文化として根付いたアニメが日本に輸入されたのは、1960年代のことです。1963年からテレビ放映された『鉄腕アトム』や、1965年から放映された『オバケのQ太郎』などがその先駆けでした。これらの日本のアニメをディズニーアニメと比較すると、時には深刻で暗い側面もある思想性や科学性など、アメリカとは異なる文化に基づく作品作りがされていることがわかります。潤沢な予算により滑らかで美しい動きの表現を実現していたディズニーアニメに対し、当時予算の乏しかった日本のアニメは、キャラクターの目や口元、手など一部分だけを動かすといった工夫や、余白や静止を生かした演出を生み出すなど、独自の作品性を育んでいきました。
うまく変形して輸入し、新たな文化を生み出す
このように、ディズニーアニメと日本のアニメを比較してみると、日本人は、外国の文化をそのままコピーして輸入するのではなく、自分たちの環境や文化に適合するようにうまく変形して輸入し、そこから新たな文化を生み出す術に長けていることがわかります。アニメという切り口で考えるだけでも、日米の大衆文化のさまざまな特徴について理解できるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京女子大学 現代教養学部 国際社会学科 社会学専攻 教授 伊奈 正人 先生
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