意識的? 自動的? 思いやりのメカニズムとは

意識的? 自動的? 思いやりのメカニズムとは

人の痛みを見ると、自動的に自分も痛みを感じる

私たち人間は、「共感」という相手を思いやる心の仕組みを持っています。映画の残酷なシーンを観ている時、思わず自分まで痛さを感じてしまうような時があります。これが「共感」の一種で、意識することなく自動的に起こっています。かわいそうな人を見ると、なんとかして助けてあげようと思うのも、この「共感」のメカニズムが脳で働いたからです。
2011年3月に東日本大震災が起き、大勢の人が被災地でボランティアをしたり、募金活動を行ったのは、こうした脳の働きが影響していると言えます。

相手の立場に立って考える

一方、意識的に相手の立場に立って、自分だったらどう感じるだろうかというシミュレーションをすることで、感情移入し、人の行動を理解したり予測したりする場合もあります。こちらは痛みの共感の場合とは違って、意識的に考えて行っているものです。例えば、私たちの友だちの中にも人の気持ちを本当によくわかっている人がいます。彼らはなぜ人の気持ちがわかるのかというと、普段から相手の立場に立って考えるということを行っていることが多いからです。自分が相手の立場だったら、こうされると嬉しいというようなことを想像して行動しているのです。

脳はもともと使わないようにできている

人間の脳は、認知能力の容量がある程度決まっていることもあり、日常生活では極力脳を使わないで意思決定をするような省エネの仕組みになっています。例えば料理する時に計量スプーンを使わないで、目分量で調味料を入れてしまうというのがひとつの例です。もしすべての行動において脳をフル活用しようとすると、脳は疲れてしまいます。しかし人間関係においては、ある程度意識的に脳を使って相手の心を想像しながら感情移入するということが必要です。この「共感」は思いやる心と同様に、良好な人間関係を構築するのに効果があり、社会生活を円滑に行う上で非常に重要になります。

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大正大学 人間学部 人間科学科 准教授 谷田 林士 先生

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メッセージ

自分もそうでしたが、高校に入ると授業が難しくなってきて、この科目は勉強しなくてもいいのでは、と思える科目があるかもしれません。このように思ってしまうのは、なぜその科目を学ぶ必要があるのかが見えていないからだと思います。つまらないからや難しいからという理由で勉強をやめてしまう前に、その科目を担当する先生にこの科目を学ぶ必要性や、勉強したら将来どんなことに役立つのかなどを聞いてみましょう。ちなみにあなたが心理学の道に進みたいと考えているのなら、数学や生物をしっかり学んでおくことをお勧めします。

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大正大学は大正15(1926)年に設立された、2026年に100周年を迎える伝統のある大学です。6学部10学科の学問分野で文学や心理、歴史、メディアなど、多彩な学びを展開し、地域社会に貢献できる人材を目指します。キャンパスは東京都豊島区にあり、池袋・巣鴨からもアクセスしやすい立地です。全学部が4年間を同じキャンパスで過ごします。また、1学年約1200名の学生に対し、教員は154名。教員1人あたりの1学年の学生数が7.8名と、教員との距離が非常に近いことも特徴です。