意識的? 自動的? 思いやりのメカニズムとは
人の痛みを見ると、自動的に自分も痛みを感じる
私たち人間は、「共感」という相手を思いやる心の仕組みを持っています。映画の残酷なシーンを観ている時、思わず自分まで痛さを感じてしまうような時があります。これが「共感」の一種で、意識することなく自動的に起こっています。かわいそうな人を見ると、なんとかして助けてあげようと思うのも、この「共感」のメカニズムが脳で働いたからです。
2011年3月に東日本大震災が起き、大勢の人が被災地でボランティアをしたり、募金活動を行ったのは、こうした脳の働きが影響していると言えます。
相手の立場に立って考える
一方、意識的に相手の立場に立って、自分だったらどう感じるだろうかというシミュレーションをすることで、感情移入し、人の行動を理解したり予測したりする場合もあります。こちらは痛みの共感の場合とは違って、意識的に考えて行っているものです。例えば、私たちの友だちの中にも人の気持ちを本当によくわかっている人がいます。彼らはなぜ人の気持ちがわかるのかというと、普段から相手の立場に立って考えるということを行っていることが多いからです。自分が相手の立場だったら、こうされると嬉しいというようなことを想像して行動しているのです。
脳はもともと使わないようにできている
人間の脳は、認知能力の容量がある程度決まっていることもあり、日常生活では極力脳を使わないで意思決定をするような省エネの仕組みになっています。例えば料理する時に計量スプーンを使わないで、目分量で調味料を入れてしまうというのがひとつの例です。もしすべての行動において脳をフル活用しようとすると、脳は疲れてしまいます。しかし人間関係においては、ある程度意識的に脳を使って相手の心を想像しながら感情移入するということが必要です。この「共感」は思いやる心と同様に、良好な人間関係を構築するのに効果があり、社会生活を円滑に行う上で非常に重要になります。
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