「方言、すきやねん!」 方言の再評価とその可能性
再評価される「方言」
方言は日本各地にあります。それぞれの地方で、その土地に合った言葉を生み出してきたからです。しかし、明治以降は、中央集権国家をめざすために方言を廃する政策がとられ、方言を話す人が劣等感を持ったり、差別されたりするようになりました。さらにテレビやラジオの影響により、ほぼ標準語が日本全国に浸透し方言は廃れていきました。それでも方言は完全にはなくなりませんでした。現代では、むしろ方言の持つあたたかさや懐かしさが再評価されています。
カボチャとナンキンの違い
大阪には「ナンキン」という方言があり、カボチャのことを意味します。カボチャはもともと日本のものではなく、南蛮貿易で日本に入ってきました。最初はポルトガル語でカボチャを意味するabobora (アボボラ)から「ボーブラ」と呼ばれていました。やがてカンボジアの産物であることからCambodia abobora(カンボジアアボボラ)となり、そこからカボチャという言葉が広まりました。その後に品種改良でおいしくなり、今度はカボチャ輸入の寄港地である中国の南京から「ナンキン」と名付けられました。時代は流れ、カボチャが共通語として定着しましたが、大阪ではナンキンと呼ばれていたので「カボチャ」と「ナンキン」の両方が存在することになりました。ほかの地域では共通語が残ることが多いのですが、大阪ではカボチャは丸ごとのもの、ナンキンは調理したものと意味を分けたのです。ナンキンの方がおいしそうな印象を持つ人が多いので、方言として言葉が残ったと考えられるのです。
新しい言葉へと変化
佐賀の方言である「がばい」や大阪の「好きやねん」などの言葉は、地方らしさや文化をよく表現しているので新たな価値を見出され、「商品」としても利用されるようになっています。言葉は時代によって変化するものですが、これからも方言は標準語と混ぜ合わさって、新しいコミュニケーションツールとして息づいていくことでしょう。
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大阪教育大学 教育学部 教員養成課程 国語教育部門 教授 井上 博文 先生
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