江戸時代にもガイドブックやファッショングラビアがあった

江戸時代にもガイドブックやファッショングラビアがあった

江戸の繁華街にはカフェの原型が!

江戸時代は庶民文化が花開いた時期で、庶民が楽しむための芸能や娯楽も発展しました。文字だけでなく、絵でもその記録が残っています。江戸後期の江戸名所を描いた『江戸名所図会』は今で言うガイドブックのようなものです。当時、江戸の中で最も賑やかだった繁華街は両国橋のたもとですが、『江戸名所図会』にはここにたくさんの小屋が建って人々が集まっている様子が描かれています。娯楽の王道であった歌舞伎の芝居小屋はもちろん(にせ歌舞伎ですが)、お茶屋(今で言うカフェ)や洋弓(ゲームセンター)、こま回しやからくりなどの見せ物があります。そんな繁華街にみんなが集まって遊んでいる様子が描かれ、当時の庶民の生活の一端がうかがえます。

浮世絵はファッショングラビア?

江戸時代は「女性の暗黒時代」と呼ばれることもありますが、史料をひもとくと必ずしもそうではありません。当時の女性の生活ぶりは、幕府の通達から推測できます。つまり禁止されるからには、実際にそれをする人が多くいて風俗の乱れが懸念されたということです。例えば、女性のかんざしや櫛でべっ甲や銀を使った派手なものを禁止するお触れが出たのは、華美な装飾に走る女性が多かったからでしょう。そんな女性たちのファッション情報の発信源は浮世絵でした。美人画のモデルは吉原などの遊女です。彼女たちの華やかな装いは女性たちの憧れで、髪型や飾りなどを競って真似したようです。逆にいくら美人でも町娘を浮世絵に描く、現代の読者モデルのようなことは幕府が風俗の乱れを気にして禁止していました。

史料は楽しい

式亭三馬の『浮世風呂』には女性が寺子屋や三味線、琴などの稽古事に忙しく過ごす様子が書かれています。武家奉公でキャリアアップをはかり、年頃になると良縁を得て嫁に行きました。史料というと難しいイメージかもしれませんが、はまるとやめられません。当時の暮らしぶりを生き生きと伝えてくれます。

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東京外国語大学 国際社会学部 国際社会学科 教授 吉田 ゆり子 先生

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日本史

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メッセージ

「東京外国語大学に日本史の先生がなぜいるの?」とよく聞かれますが「東京外国語大学だからこそ日本史は必要なんだよ」と答えます。海外に行って日本のことをいろいろ聞かれたとき、自分が日本のことをあまりに知らないことに気づくでしょう。世界的に有名な『武士道』は新渡戸稲造の著作ですが、ベルギーの法学者ラブレーから日本の道徳について聞かれ、のちにアメリカではっと思いついた言葉がタイトルになっていると言います。日本の歴史を学び、それを踏まえて日本を見つめ直し、海外で伝えていってほしいと思います。

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