外来植物から日本の植物へ~新しい緑化の形をめざす~
日本の緑化に大活躍した外来植物
道路建設や宅地造成などによってできる斜面(のり面)を放っておくと、日本は雨が多いために崩れてくる恐れがあります。崩落を防ぐためには、コンクリートで固めたり、緑で覆うなどの対策が必要です。そこで選ばれたのが、費用が安く見た目も良い緑化です。牧草を使った緑化スプレー工法は、日本で開発された技術で、1963年の名神高速道路建設時に大々的に使われました。これが見事に成功し、今では高速道路ののり面はきれいに自然回復しています。その後スプレー工法は、世界に広まっていきました。
緑化がもたらした思わぬ副作用
最初にのり面に吹きつけられたのは、牧草の種でした。やがて牧草が育ってくると、ほかの植物も侵入してきます。一方で牧草が実らせた種はその後、道路沿いに流されて行きました。そして日本全国の道路沿いに牧草が広がっていったのです。これが問題を引き起こします。なぜなら使われた牧草は外来種で、しかも非常に強い繁殖性を持っていたからです。山岳道路でも使われた牧草は、いつの間にか山の中にまではびこるようになってしまいました。その結果、日本本来の植生が失われ、外来種の牧草に取って代わられてしまったのです。
外来生物法で生態系を守る
2005年に「外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」が施行されました。この法律は、日本本来の生態系を損ねたり、農林水産物に被害を与えたりする恐れがある外来種の輸入や栽培を禁止しています。動物ではブラックバスやアライグマが対象となり、植物ではアクアリウム用の水草などが販売禁止となりました。外来種の牧草については禁止指定こそされなかったものの、可能な限り使用を控えるよう議員決議がなされています。しかし牧草は、緑化だけでなく牧畜業でも使われるので、使用制限は難しいのが実情です。そこで日本本来の植物を活用して、自然な植生を回復させる新たな緑化の形の研究が進められています。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 農学部 緑地環境科学科 教授 藤原 宣夫 先生
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