赤ちゃんの目に、世界はどう映っているのだろう?
赤ちゃんはお母さんの顔がわかる?
生後間もない赤ちゃんには、色や形、大きさや遠近などが見えているのでしょうか。もし、そうでなければ、いつから大人と同じように見えるようになるのでしょうか。
赤ちゃんの目に映る世界を調べる方法の1つに、「選好注視法」があります。これは、好きなものをじっと見つめるという赤ちゃんの習性を利用した行動観察による実験で、例えば、お母さんの顔写真とお母さんによく似た女性の顔写真を見せ、どちらを長く見るかを調べるというものです。何回も実験を繰り返し、お母さんの写真を見る時間の方が長いという結論が出れば、赤ちゃんは、お母さんの顔を認識していることがわかります。
生まれたばかりの赤ちゃんの視力は0.02
また、赤ちゃんの視力を測る実験もあります。これは、白地に黒の線を描いたカードと灰色のカードを見せ、その違いを認識できるかを調べる方法です。黒い線の幅を狭くしていくと、やがて白黒の区別がつかなくなり、灰色に見えるようになることから、この特徴を使って赤ちゃんがどの程度まで線を識別できるかを調べるのです。この実験の結果、赤ちゃんの視力は、生まれたばかりでは0.02程度、生後6カ月で0.2程度だということがわかりました。
このほか、色や形、奥行きなどに関するさまざまな実験により、生まれた当初はよく見えなかった赤ちゃんの目も、生後4、5カ月頃に立体が見えるようになり、つかまり立ちやはいはいができる8カ月くらいになると、知っている人と知らない人の区別もつくようになることがわかってきました。
発達障がいのある子どもの認知の理解にも
赤ちゃんのものの見え方=視覚認知を調べることは、赤ちゃん自身の発達の過程を理解することはもちろん、発達障がいのある子どもの認識世界を理解することにも役立ちます。
赤ちゃんの視覚を研究することで、認知世界獲得の定型的なプロセスがわかるため、そのプロセスと異なる発達障がいのある子どもの認知の仕方についても、特徴が見えてくるのです。
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先生情報 / 大学情報
日本女子大学 人間社会学部 心理学科 教授 金沢 創 先生
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